【不動産DX】年間2,500件の解約受付を紙からFormBridgeへ!反対の声と向き合って実現した日本エイジェントの全体最適
目次
トヨクモkintoneフェス2026「トヨクモALIVE」登壇の様子をレポート!
部署をまたぐ業務改善は、ツールを決める前につまずくことがあります。どんなに良い仕組みでも、それを使う人が「今のままでいい」と思っていれば動かないからです。
株式会社日本エイジェントの戸田昭仁さんが取り組んだのは、年間2,500件の賃貸借契約の解約業務の改善。しかし現場から最初に返ってきたのは、「繁忙期前にやめてほしい」「私は紙に慣れている」という声でした。
この記事は、2026年7月に開催した「トヨクモ kintone フェス 2026」のセッション【トヨクモALIVE】での登壇レポートです。
今回は「kintone×トヨクモで仕掛ける『全体最適』の加速」でご登壇いただきました!
登壇者情報|戸田昭仁さん(株式会社日本エイジェント)
愛媛県宇和島市出身。DX推進の部署に所属し、日々kintoneとトヨクモ製品を触りながら業務改善に取り組んでいる。kintone hive 2023 matsuyamaにも登壇。
登壇の様子は動画でもご覧いただけます!
管理戸数・仲介件数 愛媛県No.1の賃貸管理会社
株式会社日本エイジェントは、賃貸マンションの募集・管理をメインに手がける不動産会社です。愛媛県松山市に本社を置き、東京・大阪・愛知にも拠点があります。従業員は223名です。
FAXも帯替えも現役。不動産業界はまだまだアナログ
当社では、私だけでなく、たくさんのスタッフがkintoneとトヨクモ製品を毎日触って業務改善をしています。こう聞くと、DXが進んでいる会社だと思われるかもしれません。
しかし不動産業界全体を見てみると、まだまだアナログな業界です。
いまだにFAXが必要な場面が多いですし、「帯替え(おびがえ)」といって、管理会社が出している物件資料の下の帯を仲介会社のものに替えてお客様にご紹介する、という文化も残っています。
契約は対面・紙・印鑑ベースですし、店舗のガラス窓に物件資料を貼る光景も、皆さん見たことがあるのではないでしょうか。そして大量の資料棚。これが不動産業界の現状です。
当社も、実は一部は同じでした。しかしkintoneを取り入れ、活用していくことで、業務は大きく変わっていきました。
業務改善のスピードが圧倒的に速くなりましたし、今では現場のスタッフが自らアプリを作って業務改善をしています。
改善のハードルがぐっと下がったことで、現場は自分たちの部分最適を進めていく。
そして我々は、部署と部署をつないでいく全体最適に取り組む。そういう役割分担ができる環境になりました。
今回はその全体最適の中から、一番効果が出せた事例をご紹介します。年間2,500件あった賃貸借契約の解約業務を、紙から脱却させていった話です。
一番アナログだった、年間2,500件の解約業務
まず、当時の解約フローをご説明します。
入居時に解約通知書をお渡ししておき、解約の際はそれに手書きでご記入いただいて、郵送または持参してもらう。それを既存のシステムにスタッフが入力します。
そして複写用のプリンター。古いものなので、よく紙詰まりを起こすのです。複写用紙を3枚くらい印刷してちぎって、社内便として各部署に回していく。社内便が届いた部署では、書類の山になっていきます。
これは何とかしないといけない、と考えました。
「業務改善よりも、とにかく人を増やしてほしい」から始まった
この解約作業を担っているのは、解約受付係のパートさん2名です。まずはそのお二人に話をしました。kintoneを使って業務の効率化、ペーパーレス化を進めていきたいんです、一緒にやりませんか、と。
返ってきたのは、こんな言葉でした。
「私たちには相談する上司もいないし、改善はお任せします。それよりも人を増やしてほしい。」
彼女たちは非効率な作業に時間を奪われて、大きなストレスを抱えている状態でした。
これは業務改善だけではなく、組織変革、風土改善をしていかないと無理だな。でも何とか、彼女たちにも同じ方向を向いてもらいたいな。そう思いました。
4部署から返ってきた、反対の声
そこで、解約に関わる全ての人を集めてこう言いました。kintone、トヨクモを使って業務の効率化、ペーパーレス化をしていきたい、みんなやりませんか、と。
集まったのは、解約係、リフォーム係、家賃管理係、リフォーム精算係の4部署です。
「繁忙期前にやめてほしい。」「紙が慣れているんです。」「全体最適っていい言葉かもしれませんけど、手間が増えていませんか。」「やるのはいいけど、まず紙と併用してやりたい。」
それから、「間違いに気づけない。」という声がありました。どういうことですか、と尋ねると精算書を見せてくれました。「手で計算しているんですけども、書かれた数字がちょっと薄いんですよね。自信がないときの字です。よく間違っているんです」と。正直、言っていることが分からなくて3回くらい聞き直しました。
それでも何とか、話し合いを重ねて業務改善する方向性に納得していただきました。
その帰り際に解約受付係の方から声をかけられました。
「この取り組み、うまくいくかどうか私は分かりませんけど、やっと会社が私たちのことを気にかけてくれたみたいで嬉しいです。」
あっ、と思いました。彼女たちにとって一番必要で大切だったものは何だったのか。それは、尊重して真剣に向き合う姿勢だったことに気づいたのです。
これを聞いて、このプロジェクトは絶対に成功させてやる、と思いました。
FormBridgeとkViewerのルックアップで、入口をWebに
その後何度も打ち合わせを重ねて作ったのが、この仕組みです。
まず、手書きだった解約通知書はFormBridgeを使ってWebで受付に変更。物件名はお客様がよく間違えるところでしたので、kViewerのルックアップ機能を使って、建物名や住所を検索して自動入力できるようにしました。
入力された情報は全部kintoneに入っていきますので、社内の処理で回していた書類を無くして、kintoneで通知する形にしました。「間違いに気づけない」と言われていた退室精算明細書も、手計算ではなく自動計算です。
つまり、業務の入口である解約通知の受付をWebに変えたことで、そのあとに続く社内の処理も、まとめて紙から離れていったのです。
郵送費は年間17万円削減。社内便は0日に
運用を進めていくと、思った以上の効果が出てきました。
一つ目は郵送費用の削減です。
解約通知書は紙でお渡ししているのですが、ほとんどの方が無くしてしまいます。そのため、お電話をいただいたら郵送して、返信用の封筒で送り返してもらっていました。これがなくなったので、郵送費が年間17万円浮き、さらに入居者様からの電話ももちろん減りました。
二つ目は書類の山から情報を探す時間。
年間6時間かかっていたものが1時間になり、83%の削減です。
三つ目は精算処理。
自動計算されて間違いが無くなり、年間288時間が108時間へ。62.5%の削減になりました。
そして社内便。
kintoneで通知されるので、書類が各部署に届くのを待つ日数は0日です。
最後に、これまでは全ての書類をスキャンして、どの建物のどの部屋の契約書かが分かるようにデータベースへ登録していました。しかし、フォームから入力されたデータは自動でkintoneに転記されるので、100%の削減です。
3,000戸増えても、受付係はパートさん2名のまま
何よりも、この取り組みで打ち合わせを重ねたことで、部署をまたいだ横の信頼を構築することができました。
kintoneとFormBridge、kViewerという共通の土台の上に、解約係、リフォーム係、家賃管理係、リフォーム精算係が乗っている状態です。最初は反対の声を出していた4部署が、同じ仕組みを使う関係になりました。
そして解約係とリフォーム係が一緒に業務を進めていく形になり、彼女たちにとって、やっと相談できる上司ができました。
最初はあれだけ「人を増やしてほしい」と言われていたのですが、その後、管理する部屋が3,000戸増えても、解約受付係はいまだにパートさん2名のままです。業務量の問題を人を増やす以外の方法で解決できたプロジェクトとして、今では社内から注目されている取り組みになりました。
全体最適の方程式──入口と出口、プロトタイプ、主役は現場
最後に、私がkintoneを使った業務改善で大事にしている方程式をご紹介します。
一つ目は、業務の入口と出口を完全にデジタル化すること。そうすれば中身も自然とデジタルになっていきます。
二つ目は、早い段階でプロトタイプを作ること。最初は簡単でいいんです。どういう方法で今悩んでいる手間や困りごとが削減されるか、どのように情報が共有されるか、どのくらい簡単に使えるかを見せていき理解をしてもらいます。
そして三つ目が、改善の支え合い体制です。主役は現場。彼らの声を集めてしっかり聞いて、共感していく。もし必要があれば、組織変革も進めていく。
そうすることで、大きな成果を出していけるのではないかなと思っています。
kintoneの取り組みによって、当社の仕事は大きく変わりました。現在はこれにプラスして、AIの活用を進めています。
今年1年間は、業務改善にAIを活用できるスタッフをどんどん増やしていくことを目標に活動していく予定です。
質疑応答:部署をまたぐ改善は、どこから手をつけるのがよいですか?
――部署内の改善ならそれぞれの部署ごとに進められると思いますが、部署をまたいだ改善となると、どこから手をつけるか、どういった順番でやるか、戸田さんなりのコツはありますか。
順番は、あんまりないですね。
業務の流れを詳細まで全部聞いていって、自分の中で整理していくというか。この流れがこう変わる、そこでどういったツールを使う、というところまで整理していきます。
とにかく現場の話を聞いていくことから始めるのが一番いいんじゃないかなと。
また、部署間の連携を実現するにあたっては、自分がハブとなって部署と部署をつないでいくことが重要な仕事ですし、そこには難しさも感じております。
ご登壇ありがとうございました!
全体最適というと大きな話に聞こえますが、実際に戸田さんがされていたのは「繁忙期前にやめて」「紙に慣れている」という一つひとつの声に向き合うことでした。数字のインパクトはもちろん素晴らしいのですが、そこに至るまでに信頼構築の時間がしっかりあったことが伝わってきました。
印象的だったのは、会議室を出るときにかけてもらった「やっと会社が私たちのことを気にかけてくれた」という言葉です。現場が本当に求めていたのは、新しいツールそのものよりも、尊重して向き合ってもらうことだったのかもしれません。仕事をするのはツールではなく人である、というメッセージも含まれていたのではないでしょうか。
「業務の入口と出口をデジタル化する」「雑でいいからプロトタイプを見せる」という進め方は、業種を問わず試せそうです。反対の声が出ている状態から始めて、管理戸数が3,000戸増えても人員は据え置き、という体制を構築した過程は、これから部署をまたぐ改善に挑む方にとって大きなヒントになると思います。
今回お話しの中でご紹介いただいたFormBridge、kViewerは30日間のお試しを何度でもご利用いただけます。
「一人で悩まない」が、DX成功の第一歩
業務改善を進める中で、壁にぶつかったり、孤独を感じたりすることはありませんか?
ユーザーコミュニティ「トヨクモPark」には、試行錯誤しながら楽しく改善を続ける「仲間」がたくさん集まっています。 ちょっとした相談から、マニアックな活用の自慢まで。
トヨクモ製品をもっと身近に、もっと楽しく使いこなすための場所で、あなたをお待ちしています。

















