電子契約未導入で取引先から電子契約を依頼されたら?チェックポイント7つ

改正電子帳簿保存法やデジタル改革関連法に伴い、さまざまな業界において電子契約を施行するケースが増えてきました。

契約相手方から電子契約を求められたら、受け入れるべきかどうか、どのように対応すべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、自社で電子契約が未導入なときに利用を打診されたらどうするべきか、電子契約を求められた際にチェックすべきポイントなどを解説します。

電子契約未導入で利用を打診されたときの選択肢

自社で電子契約が未導入になったにもかかわらず、電子契約の利用を打診されたときは、以下のような選択肢を検討するといいでしょう。

  • 取引先と同一の電子契約サービスを利用する
  • 片方のみ電子契約する

ここでは、それぞれの選択肢について解説します。

取引先と同じ電子契約サービスを利用する

電子契約を求められた際に、自社で問題なく取引先の意向に同意できる場合は、取引先と同じ電子契約サービスを用いるのが一般的です。

電子契約サービスには「ゲストアカウント機能」等があるので、自社が新しくサービスを契約することなく契約を締結することができます。

片方のみ電子契約する

何らかの理由で電子契約の導入が難しい場合は、片方のみ電子契約する方法があります。

具体的には、取引先のみ電子署名したうえで、自社は電子契約を書面に出力して押印もしくはサインして保管するといった流れで契約を締結できます。ただし、法的効力は不明な点には注意しましょう。

電子契約を求められた際にチェックするポイント7つ

取引先に電子契約を求められた際は、以下のポイントについてチェックしましょう。

  1. 法令上電子契約が可能か
  2. 社内ルール上問題ないか
  3. 署名タイプの確認
  4. 契約期間の確認
  5. 契約書の文言の確認
  6. 認定スタンプの確認
  7. 取引先が利用するサービスの確認

ここでは、それぞれのチェックポイントについて解説します。

1. 法令上電子契約が可能か

まずは、法令上問題なく電子化できるかを確認しましょう。中には契約の電子化が認められていない場合もあるので注意が必要です。

業務委託契約書や秘密保持契約(NDA)、受発注所、申込書などよく利用されている書面は電子化が可能です。

電子契約の利用を打診されている以上は、取引先が十分に確認したうえでクリアしているはずですが、念のため自社の法務部門に検討してもらうようにしましょう。

電子化できない契約関連文書や、電子化に当事者の承諾等が必要な契約関連文書については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひチェックしてください。

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2. 社内ルール上問題ないか

続いて、社内ルール上電子契約が問題なく行えるかも確認しましょう。

電子契約が効率的かつ法律上問題ないとはいえ、社内ルールに反することは内部統制上問題になってしまいます。保管方法や取り決めの変更によって、社内ルールに違反しないかどうか十分に確認することが重要です。

一般的には捺印や承認の規定があるので、合わせて確認するのが望ましいです。

従来の紙ベースでの契約から電子契約に移行した場合に、原本としての保管など社内ルールに反する場合はどうするべきか検討しましょう。

また、社内規定を変更する場合は、どんな手順で行うかも事前に確認しておくとスムーズです。電子契約移行後も、定期的に規定の変更をチェックし、新たなセキュリティ対策や保管規定が必要かどうかも合わせてチェックしましょう。

3. 署名タイプの確認

電子契約には、「事業者署名型(立会人型)」と「当事者型(電子署名型)」の2つのタイプがあります。

事業者署名型は、メール認証を始めとした認証とシステムログを利用することで、本人確認を行う仕組みです。電子証明書やICカードリーダーなどを準備せずに利用できるので、負担が少なく導入しやすいと言えます。

当事者型は、署名者本人の電子証明書を利用することで、本人であることを担保する仕組みです。電子証明書を確認することで、電子証明法に則った厳格な本人認証が行えるでしょう。

また、中には事業者署名型と当事者型を併用した契約締結が行える「ハイブリッド型」のタイプもあります。

それぞれのメリットとデメリットを踏まえた上で、どのタイプを採用した電子契約サービスを導入するか判断するのがおすすめです。

4. 長期署名への対応の有無

電子契約では、契約期間がどれくらい存続するかを想定して確認する必要があります。

電子署名の有効期限は1~3年程度ですが、それ以上の契約期間が想定される場合は、長期署名に対応したシステムの導入を検討しましょう。

長期署名とは、電子署名に使われた暗号が危殆化する前に、最新の暗号技術を用いたタイムスタンプを付与して暗号をかけ直すことで電子署名の効果を延長する仕組みです。

10年以上の長期署名をするには、アーカイブタイムスタンプを付与することで、有効期限を延長することができます。

5. 契約書の文言の確認

契約書の文言が、電子契約に合っているかどうかも確認しましょう。基本的に、契約書の内容は紙の契約書と同じ内容のままで大きな問題はありません。

しかし、多くの契約書では「文書」や「押印」などといった書面契約特有の表現が記載されているので、電子契約に合わせて訂正するケースもあります。

書面契約から電子契約に変更した箇所を社内で取りまとめたり、取引先と共有したりして、スムーズに確認が取れるよう進めましょう。

6. 認定タイムスタンプの確認

電子契約は、誰が・いつ・何に合意したかを改ざん不能な形で記録されます。

電子署名は、「誰が」「何に」を明確に記録するもので、文書が「いつ」締結されたものかを明確に記録するのは、タイムスタンプの役割です。

認定タイムスタンプは、総務大臣から認証を受けた事業者が発行するもので、税務上電子データ保存に求められる「真実性の確保」を満たせます。

できる限り認定タイムスタンプが付与される電子契約サービスを利用するのが望ましいものの、外資系の電子契約サービスには標準実装されていません。

重要な契約や長期間存続する契約には、認定タイムスタンプがあるほうがよいと言えるでしょう。

7. 取引先が利用するサービスの確認

取引先がどのような電子契約サービスを利用しているか確認しましょう。

前述した「事業者署名型」「当事者型」の違いだけでなく、契約書の確認方法や、契約の締結手順、操作マニュアルなど事前に確認しておくべきポイントはさまざまです。

面倒な手続きが多かったり、契約締結にあたって不安が残る電子契約の場合は、異なる電子契約サービスで進められないか打診しましょう。

契約相手方にとっても利用しやすく、サポートも充実している電子契約サービスのほうが、安心して手続きを進められるでしょう。

電子契約を導入するためのポイント

電子契約を導入するためのポイントとして、以下が挙げられます。

  • 一部の書面から電子化を進める
  • 社内向けの説明会を打診する
  • 慣れないうちは紙でも管理する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

一部の書面から電子化を進める

電子契約を導入するときは、いきなり全ての書類を電子化するのではなく、一部の書面から始めるとスムーズです。

まずは、頻繁に使う書類や重要度の高い書類を選んで電子化を進めましょう。

また、少数の書類から始めることで、社員からのフィードバックを集めやすく、電子契約システムの使い勝手や運用フローを確立しやすくなります。

段階的に導入すれば、電子契約における問題点を解消しながら進められるでしょう。

社内向けの説明会を打診する

電子契約を導入する際には、社内向けの説明会を開催することがおすすめです。説明会では、電子契約のメリットやシステムの使い方をわかりやすく説明しましょう。

実際に操作しながら説明することで、具体的な利用イメージを持ってもらうことができます。また、社員が新しいシステムに対する不安や疑問を解消するために、質疑応答の時間を設けると良いでしょう。

社員の中には、電子契約に対して抵抗感を持つ人もいるかもしれません。現場の理解を促すことで、スムーズに導入しやすくなるでしょう。

慣れないうちは紙でも管理する

電子契約を導入したばかりの期間では、電子契約したうえで印刷して保管するといったように、紙の書類と併用することをおすすめします。

新しいシステムに完全移行する前に、紙ベースの管理も並行して行うことで、移行中のリスクを減らすことができます。

重要な書類は紙でも保管し、必要に応じていつでも参照できるようにしておきましょう。また、電子データの定期的なバックアップを行い、データの紛失やシステムトラブルに備えることも重要です。

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