kintone×トヨクモ製品で庁内横断の業務改善を実現!尼崎市役所の取り組みをご紹介

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2023」は、デジタル化して効率的に業務改善する珠玉のアイデアを学び・広める、2日間のオンラインイベントです。2023年のテーマは、「やれるっ、できるっ、キントーン!」で、よりトヨクモ製品をカンターンに活用し、業務改善ができる、そんな活用の事例をご紹介いただきました。
今回は、尼崎市 行政マネジメント部 デジタル推進課の橋本氏と松井氏に語っていただきました。
尼崎市の紹介
尼崎市は、兵庫県の南東に位置する人口約45万人の中核市です。あまり治安の良くない街というイメージがあるかもしれませんが、例えばひったくりの発生件数は平成24年度から96%減少しており、街頭犯罪件数は年々減少しています。
観光面では、尼崎城のほか、隠れファンの多い工場夜景も人気です。お近くにお立ち寄りの際は、ぜひ尼崎市にも足を運んでいただければと思います。(橋本氏)
自己紹介
今回は、尼崎市の行政マネジメント部 デジタル推進課に所属する私・橋本と松井の2人でご説明します。私・橋本はkintoneおよびトヨクモ社製品の導入に携わった経緯や背景について説明し、松井は今回お見せする事例のアプリ作成業務の中心を担った経緯とアプリの紹介を担当します。
松井は入庁2年目ですが、入庁1年目からkintoneおよびトヨクモ社製品を使ったアプリ作成などの現場の中心を担っています。年次にかかわらず誰でもすぐに使えるという点がkintoneおよびトヨクモ社製品の強みであると感じています。(橋本氏)
地方公共団体が置かれている現状
地方公共団体では、縦割り・紙中心・土日クローズといった旧態依然の役所文化に加えて、少子高齢化による労働人口の減少、「2040年問題」と呼ばれる社会保障関連の事務量増大などの問題があります。
仕事は増える傾向にありながら働き手は減少し、仕事のやり方は非効率なままという状況のなかで、尼崎市を含む地方公共団体は、DXを旗印にデジタルの力で事務の効率化や住民サービスの向上に取り組んでいるところです。(橋本氏)
kintone導入の経緯
kintoneと専用パッケージの比較において、「汎用性」についてはご説明が不要かと思いますので、まず「即時性」という観点でご説明します。役所の単年度予算の考え方では、システムを導入する際はまず予算要求をおこない、予算を確保したうえで次年度に調達する形になるため、導入までに非常に時間がかかるという難点があります。しかし、kintoneではライセンスさえあれば即座にアプリ構築ができ、仮にアプリの内容に修正があってもその場で修正できる点が大きなメリットです。
また、価格面においても、専用パッケージでは保守ベンダーにカスタマイズが発生しその都度費用がかかりますが、kintoneはその場で修正してすぐにアップデートできます。
導入のきっかけは、令和元年度~令和2年度あたりから、ほかの地方公共団体でkintoneを用いた事例が相次いで取り上げられたことです。例えば、加古川市が臨時特別給付金の事務処理にkintoneおよびトヨクモ社製品を用いて申請を受け付けた事例や、大阪府が新型コロナウイルス感染症の患者増加による事務作業の爆発的な増加を緩和させるためにkintoneで内部管理用のアプリを作成した事例などがありました。
これらの事例は緊急時において即座にアプリ作成ができる点と、ベンダーではなく職員が対応できる点で、当時としてはかなり衝撃的な内容であり、尼崎市もぜひ導入したいという要望が私を含めた情報部門から上がりました。
そのような中で当時の市長から、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう市民向け総合相談窓口開設の指示があり、相談記録システム作成の話が舞い込んできました。当初、担当部署が専用パッケージを中心に検討していましたが、この機会にkintoneを導入できないかと思い、所管課に働きかけをした結果導入が決まりました。(橋本氏)
初期導入の誤算
指示された総合相談窓口については、問題なくkintoneでの構築・運用ができました。しかし、役所のDXを進めるという当初の目的を達成するために、情報部門として「kintoneを使ってください」と庁内で周知しましたが、大多数は定常業務が忙しかったり、そもそも無関心だったり、今のままでも十分対応できているのになぜやらなきゃいけないの、といった反応でした。kintoneを用いた業務件数も横ばいが続くような状況で、実際の庁内利用数はかなり少なかったですね。(橋本氏)
庁内でkintoneを導入を展開する上での課題
「イノベーター理論」における「キャズム」よりももっと手前の段階で全く普及が進んでいない状況であったため、「アーリーアダプター」に対する訴求に真剣に取り組まなければなりませんでした。(橋本氏)
職員にkintoneに対する興味を持ってもらうための取り組み
これまでのやり方では、情報部門の職員が言葉と理屈で話をして、
- 「業務改善ができるツールがありますよ」
- 「ほかの都市でも利用されていますよ」
- 「業務改善をしなければなりませんよ」
といった直接的な勧誘を行っていました。
そこを見直して、言葉ではなく視覚的にイメージしやすくしたり、遊び心を加えて心理的ハードルを下げたりと、kintoneに接してもらえるようにkViewerを使ってアプリを作成しました。カードビューを用いて、事例をカテゴリごとに分けて紹介しています。
役所の業務は縦割りで同じような事務をさまざまな部署が行っているので、その一部を業務改善できれば、芋づる式に他の部署も業務改善できる可能性があると考えたのです。(橋本氏)
kintone導入業務数を大幅にアップさせた業務改善ページ
それでは、庁内でkintone導入業務数が大幅にアップしたきっかけとなった「業務改善ページ」をご紹介します。業務改善ページを構成するのは、kintoneアプリが4つ、kViewerが4つ、フォームブリッジが2つです。
業務改善ポータルの画面では、カードビューを使用し「アンケート・調査」や「案件管理」といったカテゴリがカードとして表示しています。kintoneでの設定は、 ラジオボタンでフィールドの表示の制御をしており、その他の項目は数値フィールドや文字列フィールドとなっています。参考部分のフィールドが文字フィールドではなくリッチエディターとなっている点が最も工夫した点であり、後ほど詳しくご説明します。
業務改善ポータルですが、画面上部にはヘッダーコンテンツとしてタイトルと補足の説明文を付けています。左側はサイドコンテンツとしていくつかのメニューを表示しています。また、画面下部にはデジタル推進部の問い合わせ先とフォームブリッジのリンクがあり、導入に関する相談フォームを表示するように設定しました。
ここで、それぞれのサイドコンテンツのメニューについてご紹介します。
・「kintoneって?」
トヨクモ社が公開しているYoutube動画が表示されます
・「練習用スペース」
kintoneユーザー全員がアクセスしてアプリを自由に作成できるスペースを用意しており、実際にkintoneやプラグインが業務に活かせるのかどうかを試してもらっています。ここでテスト運用までを所管課にしてもらい、完成したアプリの本番運用を開始する際に、次のメニューである「利用申請」をしてもらいます。
・「利用申請」
フォームブリッジが開かれる設定で、kintoneやプラグインを活用する際の定量的な側面と定性的な側面についての申請という形で「どのような効果が出るのか」を報告してもらい、情報部門でまとめています。
・「マニュアル」
kViewerのリストビューを用いて一覧形式で表示しています。まだテスト段階ですが、今後はトヨクモ社が発行している「kintoneapp BLOG」のようなコンテンツを作成して、より利便性の高いものを庁内に向けて紹介したいと考えています。
・「お知らせ」
kViewerのカードビューを使用し、「このプラグインを使うとこんなことができますよ」といった紹介をしています。
メインコンテンツは、庁内で導入事例の多いものをピックアップして表示しています。例えば「アンケート・調査」をクリックすると、少しでも職員が共感できるようなわかりやすい例を挙げて、kintoneやプラグインが業務に活用できることを紹介しています。
さらに「庁内での導入事例」をクリックすると庁内での導入事例が可視化されたkViewerに飛び、定量的な効果時間に加え、どのプラグインを使用しているのかを見られます。「案件管理」や「申込み・申請」などのそれぞれの項目からも、同じように該当する導入事例を表示できます。「すべて」かタイトルをクリックすることで、庁内での導入事例すべてを表示することも可能です。
このあたりの設定では、先ほどのkintoneのリッチエディターフィールドが活かされています。JavaScriptやCSSによるカスタマイズは一切行っておらず、デフォルトの機能のみで実現しています。この設定によって、画面を見ている職員が自分の抱えている業務内容に似た業務が他にないかを探しやすくなっています。(松井氏)
業務改善ページによる庁内のkintone導入件数の推移
業務改善ページを庁内のグループウェアに埋め込み誰でも見られるように設定したところ、「うちの課でも導入できるか相談したい」「うちにも同じような業務内容がある」といった相談が増加しました。
結果的に庁内でのkintoneおよびプラグインの導入業務が大幅に増えることになりました。業務改善ページを公開してからは四半期での導入件数が2桁に達するようになり、現在は大小含めて約80業務ほどにkintoneやプラグインが導入されています。(松井氏)
導入事例①
導入事例の1つ目は、フォームブリッジとkMailerを導入した講習会や研修などの申し込みフォームです。導入前は申し込み用紙で管理しており、職員が1枚ずつ内容を確認してまとめていました。また、受講者に対してメールを送信する際には、メールアドレスや本文を1件ずつ手打ちしており、膨大な時間を要していました。
kintoneやプラグインを導入後は、紙での管理がなくなったため用紙の回収作業がゼロになりました。さらに自動返信メールやテンプレートを活用して一人ひとりに合わせた内容のメールを一斉送信できるようになったことで、導入前には200時間かかっていた案件を50時間まで削減することができたそうです。(松井氏)
導入事例②
導入事例の2つ目は、kViewerとフォームブリッジ、kMailerの3つを導入した庁内向けの調査業務です。導入前はExcelを使用しており、紙に比べると電子化が進んでいるようにもみえますが、複数名が同時に作業することができないため、隙間時間に入力したくても順番待ちが発生していました。また、未回答部署への催促メールも1件ずつ手打ちで送信していたり、実際の進捗状況の確認ができなかったりする点がデメリットでした。
導入後は、kViewerで一覧表示することで複数名がそれぞれのレコードを選択して入力作業に取りかかることができ、同時作業が可能になりました。進捗状況の確認や、個別の内容に合わせたメールの一斉送信などもできるようになっています。(松井氏)
運用体制の変更
以前は各所管課から業務内容を聞き取ったうえでデジタル推進課がkintoneアプリやプラグインの設定を行い、完成したものを所管課の担当者に使用してもらうという形で運用していました。しかし、この方法では庁内のkintoneやプラグインを使える人材が増えませんし、導入件数の増加に応じてデジタル推進課の負担が大きくなることが問題です。
そこで最近は、kintoneアプリやプラグインの作成はおもに所管課が行い、不明点や改善点をデジタル推進課がサポートする形で運用しています。(松井氏)
今後の展開について
今後の展開は、まずは引き続き庁内での成功事例を積み重ね、業務改善ページを活用してより広く庁内へ展開していくことになります。さらに、情報部門の職員だけがkintoneやプラグインに詳しくなるのではなく、庁内全体で業務改善を行える人材を増やしていくことも必要だと考えています。
また、今年度からデータコレクトを導入したので、まずはデジタル推進課で扱える人材を育成したうえで、今後、庁内への展開・活用を進めていきたいです。(松井氏)

トヨクモ編集部
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