【ノーコードで実現】3つのトヨクモ製品で複雑な市役所の業務を効率化

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。

2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。

今回は、旭川市役所 行財政改革推進部 水沢悠氏に語っていただきました。

旭川市の紹介

こんにちは、旭川市役所の水沢と申します。本日は、ノーコードで目指すデジタル行政ナンバーワンをテーマにお話しさせていただきます。

まずは、旭川市についての紹介です。旭川市は、北海道のだいたい真ん中に位置する流通の拠点です。人口は約32万人、面積は750平方kmとなっています。

ユネスコ創造都市ネットワークのデザイン都市に認定されています。ウィンタースポーツや旭川動物園、米やラーメンなどの食が有名です。

自己紹介

私は、旭川市役所の行財政改革推進部に所属しております。行財政改革推進部は、市役所自体のあり方を見直すことをミッションに、1年前に新しく作られた部になります。

これまで民間経験はなく、生活保護や税金の徴収などの仕事の後、現在の担当になりました。主に、ノーコードや人材育成、窓口改革などのDXを担当しています。特殊なスキルはありません。

ここからは、DX推進の背景・課題から始めて、ノーコード導入による変化までを順にお話ししていきます。

旭川市におけるDX推進の背景

3年前、旭川市で現状の調査を実施した結果、専門性が不要で定型的な業務が全体の4割以上を占めていることが分かりました。

市役所ではいろんな業務がありますが、紙中心の業務フローになっていることなどから、確認・入力・抽出・加工・印刷などの作業が多いため、非効率的な工程が多くなっているのではないかと分析しました。

そして、未来予測です。人口減少、少子高齢化は全国平均を上回るスピードで進行しています。

人口については、どんなに理想的に進んだとしても2040年には5万人減少するという推計があります。また、その時の年齢構成についても、今よりも働き盛りの職員の割合がものすごく減ることが予測されています。

いわゆる2040年問題です。

解決手段にDXを選んだ

市町村の仕事は生活のさまざまなインフラであるため、人口が減ったとしても仕事は減りにくく、業務効率化はマストになります。

また、サービスはどんどん高度化しており、行政同士でも競争する時代になっています。
まちのサービス低下は、人口減少につながります。

人口が減少すれば税収が減りますし、それに伴う民間サービスの撤退などにより、またサービスが低下します。この負のスパイラルに入らないことが非常に重要です。

負のスパイラルを回避するためには、業務効率化とサービス向上の両立が必要になるのですが、本来トレードオフのこの2つは普通には両立できません。

この難問に悩んで、解決手段として選んだのがDXでした。旭川市長の今津市長は、日本一のデジタル行政に挑戦しようと市民、職員に宣言しました。

しかし、もちろん簡単ではありませんでした。

DX推進の5つの要素

ここからは、DX推進における課題についてお話ししていきます。

旭川市では、さまざまなDXを進めています。DXを進めていく中で、DXを推進するための要素には以下の5つがあることが分かりました。

  1. トップの経営戦略
  2. ICTを使うためのインフラ
  3. チャレンジや変化に積極的な組織風土
  4. 庁内の制度・ルールの整備
  5. 職場環境

最も重要なのが組織風土です。組織風土とは何か、旭川市なりに考えたのが、職員一人ひとりの行動ではないかということです。

一人ひとりが自分の仕事に課題意識を持って見直し、課題解決の選択肢の1つとしてデジタルを持っているという状態を目指すべきだと考えました。

ノーコードツールの活用で組織風土を育てる

職員一人ひとりに注目すると、私と同じくデジタルの専門知識を持たない人間ばかりです。しかし、先ほどお話ししたように誰か一人だけでなく、一人ひとりの行動を変える必要があります。

そこで、ユーザーに難しい操作をさせずに、業務で使えるアプリを開発できるノーコードツールの導入を決めました。

ノーコードツールの活用が職員一人ひとりの行動を変えることで、組織風土が育ちます。積極的な組織風土があればDXが進み、業務効率化とサービス向上を両立しながら進めることで、将来に備えていくことができます。

これが旭川市の考え方です。

kintone導入の経緯

一概にノーコードツールと言ってもいろいろありますが、旭川市ではユーザーインターフェースや拡張性の高さからkintoneを選びました。

kintoneはデータベース、プロセス管理、コミュニケーション機能を持つため、それだけでも多くのことを実現できます。例えば、重いExcelの処理に時間がかかっていたり、編集の順番待ちがあったり、データ破損などのリスクから解放されます。

また、業務の流れを自由に設計してチームの仕事を快適に進めることができますし、コミュニケーションツールと業務システムが一体なので仕事にスピード感も出てきます。

しかし、市役所の業務はとても複雑で、セキュリティの制約がありながらも登場人物が多いため、kintoneだけで改善できる業務はごく一部に限られていました。

3つのトヨクモ製品で業務効率化を実現

各トヨクモ製品の特徴および活用事例についてお話しいたします。

FormBridge

旭川市では、全職員の1割程度のkintoneアカウントを用意していますが、アカウントを持っていない職員や市民からデータを受け付けたいという場面がたくさんあります。

電話や紙で受け付けた場合、入力する必要が出てくるだけでなく、確認作業まで増えてしまいます。そこで、トヨクモのFormBridgeです。FormBridgeでは、kintoneと連携したWebフォームをいくつでも作れます。

フォーム公開だけでなく、IPアドレス制限やユーザー管理をするなど、さまざまな使い方が可能です。費用対効果が高く、旭川市の業務における細かい工程を効率化することができました。

例えば、ごみの戸別収集申込の事例では、電話対応とその入力、確認などの作業時間を削減し、年間2,000時間以上の削減見込みとなりました。

また、市民にとっては平日の午前9時〜午後5時の電話でしか申し込めなかったものが、いつでもどこでも申し込めるようになりました。

kViewer

kintoneアカウントがない外部の方や市民、あるいはセキュリティ上の設定でkintone本体にアクセスできないケースがあります。

例えば、外勤中の職員にkintoneのデータを見せたい場面があるとします。このような場合に、毎回紙やドキュメントファイルにして共有するのは大変です。

そこで、旭川市ではkViewerを採用しました。kViewerを使うと、kintoneから必要な情報だけを選択して、Web上で好きな形で公開できます。FormBridge同様、広く一般に公開することも、セキュリティをかけることも可能です。

例として、ホームページの公開情報をWebビューにすれば、別システムへの情報の転記作業や確認作業がなくなり、スピード感も高まります。

そのため、住民に必要な情報をスピーディに届けられるようになります。市民が探したい情報を探すためのビュー、さらには自分がWebフォームから申し込んだ情報をいつでも好きな時に確認できるビューなども作成可能です。

FormBridge×kViewer

FormBridgeで作成したフォームとkViewerで作成したビューを連携できることが強みだと考えています。

画像のごみ収集申込アプリでは、FormBridgeからkintone、kintoneからkViewerと速やかに情報が連携して、Webフォームで申し込んだ瞬間にMyページビューを閲覧できます。

実はこのアプリを作成する時に、フォーム上では収集日の日付計算ができないことに困りました。これについては、日付計算はkintone本体でさせて、Myページビューに計算結果を表示することで解決できました。

PrintCreator

kintoneのレコードやkintoneと連携しているフォーム・ビューから好きな帳票を出力したいという場面があります。

旭川市でも、どうにかワンクリックで帳票を作りたい、またはフォームやビューから閲覧者や申請者が自分で帳票を作成できるようにしたいといったニーズがありました。

そこで、PrintCreatorを利用しました。PrintCreatorの類似サービスより優れている点として、先ほどのFormBridgeやkViewerと連携できることが挙げられます。

kintoneやフォーム、ビューなどさまざまな場所に印刷・出力するためのボタンを設置して、好きなように様式を作れるようになりました。

複数サービスを連携したkintoneアプリ

それでは、複数のトヨクモ製品を連携したkintoneアプリをご紹介します。

こちらは、就学・教育相談アプリです。学校の特別支援学級に関する業務で使用するアプリで、「申請者」は自分の子供に支援が必要なのかどうか悩む親を指します。

相談員や学校など、複数の機関が登場します。この業務は相談の申込から始まり、いつ誰がどこで相談するかの調整や連絡・支援が必要かどうかの決定、就学先の通知など、かなり複雑なフローになります。

以前は紙中心で、申請者は郵送や来庁をしなければならなかったり、書類を作るのが大変だったりと苦労されていたと思います。

職員側も入力作業が多く、郵送やFAXで情報を送るのに時間がかかり、大量の紙でできた書類を保管するのも大変でした。

これをkintoneアプリ化することで、全員が使う情報をkintoneに集約できたのです。

それぞれがセキュリティを保ってオンラインをうまく使うことで、申請者であれば郵送や来庁、職員であれば紙の資料作成から解放されました。

また、紙がデータになることで確認・入力・抽出・加工・印刷などの作業がなくなり、全体的にスムーズになりました。実際に、データ入力・情報共有の手間を削減し、電話・郵送を減らしたことにより、業務時間の4割の削減に成功しています。

製品ごとの活用方法と業務フローの変化

先ほどの就学・教育相談アプリでは、FormBridge、kViewer、PrintCreatorをフルセットで活用しております。

申請者や相談員、学校はkintoneユーザーではありません。それぞれがFormBridgeで必要な情報を送信し、kViewerで必要な情報を確認し、PrintCreatorで帳票作成ができるように作られています。

細かい業務フローでkintone連携サービス導入前後の違いを見ていきましょう。

こちらは青が紙、緑がデータを表すフローになります。ビフォアとアフターを比べると、以下の2つの変化点が挙げられます。

  1. 青が緑に変わる
  2. 全体的にすっきりする

青が緑になって、全体がすっきりしたということから、途中で多くの作業がなくなったことが分かります。

ノーコードの導入で起きた変化

最後に、ノーコードを導入して起きた変化についてお話しします。

旭川市はノーコード推進協会に加盟しておりまして、ノーコード宣言シティーにもなっています。2024年現時点では、最大のノーコード宣言シティーです。

2023年10月には、市内の企業などの来場者に、市のこれまで話してきたような取り組みやノーコード思考の大切さを伝えるイベントも開催しました。

では、ノーコードを導入し、担当者が自分でアプリを作れるようになったことで市役所にどのような変化が起きたのか?私は、主に以下の3つの変化が起きたと考えています。

  1. スピーディーなバージョンアップができる
  2. 小さな成功体験を重ねて自信をつけられる
  3. DX人材を発掘できる

こうして、一人ひとりの積極性や行動が確実に変わってきています。そして、組織のマインド、風土が育ち始めているのです。

この先にはDXの加速があり、それによって厳しい将来予想にも耐えられるだけの業務効率化とサービス向上の両立を目指していきます。

まとめ

旭川市は市長とCDOのもと、さまざまなことを同時並行で進めておりますが、最も重要な柱の1つがノーコードツールの活用だと考えています。

自分の業務を分析し、自分で解決策を考え、kintoneなどのツールで改善していく。こうした経験が職員の成長につながり、変化に積極的な組織風土ができていきます。

これは、大きなシステム開発の際にも、何か仕組みを変えるときにも最も大事になるものです。旭川市は、この積み重ねで日本一のデジタル行政を目指します。

以上、旭川市の取り組みでした。本日はありがとうございました。