kintone×トヨクモ製品でGo To トラベルキャンペーンを乗り切った星野リゾート

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2023」は、デジタル化して効率的に業務改善する珠玉のアイデアを学び・広める、2日間のオンラインイベントです。2023年のテーマは、「やれるっ、できるっ、キントーン!」で、よりトヨクモ製品をカンターンに活用し、業務改善ができる、そんな活用の事例をご紹介いただきました。

今回は、星野リゾート 情報システムグループ ITサービスマネジメントの滋野拳氏に語っていただきました。

会社概要

星野リゾートは、全国で約70施設のリゾート・温泉旅館・ホテルのオペレーションを担っている総合リゾート運営会社です。多様な旅のニーズの創造を通じて、世界に通用するリゾート運営会社を目指しています。1914年に創業し、長野県軽井沢に最初の旅館を開業し、今年で開業から109年目を迎えます。

旅行産業は世界で最も大切な平和維持産業であるという視点のもと、「旅は魔法」をミッションとして活動中です。(滋野氏)

自己紹介

改めまして、星野リゾート 情報システムグループ ITサービスマネジメントの滋野です。2015年に星野リゾートに新卒で入社し、磐梯山温泉ホテルという、スキー場が併設されているリゾートホテルへ配属されました。

ホテルの現場でレストラン業務やフロント業務を経験した後、シフト作成を主に担当していました。2020年に現在所属している情報システムグループへ社内公募で異動し、社内のヘルプデスク対応や開業施設へのシステム導入、kintoneでのノーコード開発などを担当しています。(滋野氏)

星野リゾートのkintone/トヨクモ製品活用状況

弊社が導入しているトヨクモ製品は、以下のとおりです。

導入製品:フォームブリッジ、kViewer、kMailer、プリントクリエイター、データコレクト

星野リゾートがkintoneを導入したのは、2014年です。2023年6月の時点では全社で約5,000人のユーザーが利用しており、約800個のアプリが稼働中です。全社で利用するワークフローをはじめ、現場の業務改善に幅広くkintoneを利用しています。

トヨクモ製品は2020年から導入しており、2023年6月時点でフォームブリッジ・kViewer、kMailer・プリントクリエイター・データコレクトを導入済みです。

kintone連携サービス活用事例 株式会社星野リゾート様 : kintone連携サービスの利用で、GoToトラベルキャ…

トヨクモ製品導入のきっかけ

トヨクモ製品導入のきっかけは、コロナ禍で落ち込んだ観光事業の回復施策であった「Go To トラベルキャンペーン」です。

キャンペーンの実施が発表された後、東京都がキャンペーンの対象から外れたり、キャンペーン発表前に予約していたお客様への割引適用の方針が追加・変更になったり、連日のようにルールが変わっていました。当時、Go To トラベルキャンペーンの影響で、予約担当のもとに寄せられていたお問い合わせは、平常時の倍以上という状況でした。

しかし、このとき社内のエンジニアチームは、Go To トラベルキャンペーンを自社予約システムで販売する機能の実装対応に追われていました。そのため、エンジニアは度重なるルールの変更への対応はできませんでした。

このように社内全体がGo To トラベルキャンペーンの対応に追われ、予約担当も通常の電話が取れず、予約の獲得力が低下するなど、さまざまな問題や混乱が発生していたのです。(滋野氏)

トヨクモ製品で課題を解決した方法

そんな会社の危機的状況を解決したのが、トヨクモ製品を活用した仕組みづくりです。まずは日々変更となるルールに従い、フォームブリッジで、キャンペーンの適用申請やキャンセル料を免除できるフォームを作成しました。電話やメールでのお問い合わせをフォームへ集約させることで、申請窓口の一元化を実現しました。

また、フォームブリッジから申請された情報がkintoneに蓄積されるため、予約担当者が宿泊日の近いお客様から優先して処理できるようになったことも、トヨクモ製品導入による効果です。さらに、電話でのお問い合わせから、フォームへのお問い合わせへ移行したことによって、申請に必要な情報を漏れなくお客様から取得できるようになり、処理スピードの改善にもつながりました。

このとき、フォームブリッジ以外のトヨクモ製品も導入しています。フォームブリッジ以外の連携サービスも組み合わせることで、Go To トラベルキャンペーンのルール追加や仕組みの変更に応じて、柔軟に対応できました。

例えば、申請の対応状況をkMailerでお客様へメールで通知する仕組みがそれに該当します。また、予約の確定にあたって追加の情報が必要な場合は、kViewerのMyページ機能を利用し、お客様に後から追加情報を入力してもらえるようになりました。

結果として、約7,000件の電話対応の削減につながり、予約担当の業務は大きく改善されました。さらに、Go To トラベルキャンペーンだけでなく、2022年の全国旅行支援の際もこの仕組みを使うことで、大きな混乱なく乗り切れています。(滋野氏)

一連の対応を通してトヨクモ製品が良かったと感じた点

ここからは、一連の対応を通して、トヨクモ製品の良かったと感じる点をご紹介します。(滋野氏)

システム開発知識のない社員でも扱えるため実装スピードが速かった

まず、トヨクモ製品はシステム開発知識のない社員でも扱えるため、実装スピードが速かったことが挙げられます。

すでにお伝えしたとおり、2020年の7月17日に、Go To トラベルキャンペーンから東京都を対象外とすることが急遽発表されました。しかし、社内のエンジニアチームは、自社予約システムをGo To トラベルキャンペーンに実装することを最優先に動いているタイミングでした。そのため、新たにコーディングを伴うシステム開発を行い、東京都を対象外とするルールの見直しに対応できるリソースはありませんでした。

その状況下において、同年7月下旬に情報システムグループのディレクターである久本が、東京の対応にトヨクモ製品を活用し、この局面を乗り切ることを判断しました。結果として、約1週間の開発期間でトヨクモ製品によって仕組みを構築し、8月1日には、この仕組みをリリースできたのです。

このとき担当者であった私はサービスの現場の出身者で、情報システムグループに異動して半年と日も浅い状況でした。開発経験がないうえに、異動後の半年間、kintoneもほとんど使っていませんでした。

しかし、トヨクモ製品はそのような担当者でも、簡単に使い方を理解でき、実装までできるような仕様であったため、実装までのスピードがとても速かったといえます。

開発経験のない社員でも簡単かつスピーディーにシステムを構築できるため、トヨクモ製品は社内の内製力を高めていると考えています。(滋野氏)

ベースがkintoneであるため日々変わる要件・情勢に柔軟に対応できた

ベースがkintoneであるため、日々変わる案件に柔軟に対応できた点も、トヨクモ製品を使って良かったと感じる点です。Go To トラベルキャンペーンは、日々制度の変更やルールの追加があったため、柔軟に対応する必要がありました。

フォームブリッジはkintoneがベースになっているため、変更の際はkintoneを修正し、それに応じてフォームブリッジ側を修正するだけで済みます。例えば、ある都道府県が一時的にキャンペーン停止となった際や、キャンペーン期間が延長になった際、自治体の予算が切れて対象外となる施設が出てきた際も、エンジニアのコード編集を必要としません。

このように要件が流動的に変わる案件であっても、また、たとえコーディング知識のないスタッフでも、kintoneとトヨクモ製品の組み合わせによって、しっかり対応できました。(滋野氏)

今後の展望

最後に、今後の展望をお話いたします。(滋野氏)

星野リゾートの内製力を高めている社内活用事例

まず、星野リゾートでのトヨクモ製品利用について、星野リゾートの内製力を向上させている活用事例をご紹介します。(滋野氏)

予約システムの拡張

1つ目は、予約システムをトヨクモ製品を活用して拡張している事例です。界(星野リゾートが運営する温泉旅館ブランド)の定期便や超周遊卒旅など、周遊プランや旅のサブスクのような、自社のWebサイトで販売ができないイレギュラーなプランを、フォームブリッジを活用して販売しています。

Webサイト上でフォームブリッジを用いて申込みサイトを作り、申込み後にkMailerから銀行振込案内を送信し、販売から入金、予約管理までをトヨクモ製品で行っています。(滋野氏)

新たなシステム開発前のプロトタイプとしての活用

2つ目は、トヨクモ製品を開発前のプロトタイプとして利用している事例です。コロナ禍が落ち着き始めたタイミングで、国内のスキー場やロープウェイ施設といった日帰り観光施設需要が増加したのに伴い、フォームブリッジを活用して、日帰り施設での顧客満足度調査を開始しました。まず、フォームブリッジでプロトタイプ的に実装して運用することで効果を測定し、その後、本格的にエンジニアが開発することを決定しました。

トヨクモ製品の活用により、本来システム開発を伴う案件を、より少ないリソースで、スピード感を持って実装できます。

このように、トヨクモ製品は、星野リゾートの内製力の向上を力強くサポートしています。(滋野氏)

今後のトヨクモ製品への期待

本日は、導入経緯も含めて、星野リゾートの内製力をトヨクモ製品がいかに高めているかについて紹介しました。今後は自社開発のシステムと、トヨクモ製品をうまく組み合わせることで、さらに基幹システムの拡張を加速していきたいと考えます。

トヨクモ製品をはじめとしたシステムを利用することで、ノーコード開発でカバーできる領域がさらに広がり、コーディングはさらに高度な開発に充てられるでしょう。例えば、kintoneをノーコードでカスタマイズできる、R3様のカスタマインという製品があります。同じようにノーコードでトヨクモ製品をカスタマイズできる仕組みがあると、さらに内製化につながるはずです。

また、星野リゾートでは、フォームブリッジで「予約を取る・販売する」機能を実装しています。そのため、フォームブリッジが決済機能と連動すると、さらに活用範囲が広がると考えます。(滋野氏)