トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。
2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。
今回は、北九州市 保健福祉局 係長 井上望氏に語っていただきました。
自己紹介/北九州市の紹介
皆さま、はじめまして。北九州市の保健福祉局で係長をしております井上望と申します。本日は、北九州におけるkViewerとFormBridgeの活用事例について発表させていただきます。
まずは、北九州市のご紹介です。北九州市は九州で最初の政令指定都市で、アジアに近く本州、東九州、西九州につながる交通の要所です。
山陽新幹線の全列車が停車する小倉駅、24時間離発着が可能な北九州空港など、人・モノをつなぐ重要な場所となっています。日本で初めての近代製鉄所が1901年に創業されて以来、ものづくりの街として発展を遂げてきました。
ものづくりの街でありながら豊かな自然やさまざまなブランド、食材にも恵まれた街となっておりますので、ぜひ皆さんも一度お越しください。
北九州市のDXへの取り組み
現在、北九州市は積極的にDXに取り組んでいます。
「DXにより、新たな行政のサービスモデルへ」ということで、ローコードツールやRPAなどを活用して市民目線の業務改善を実施しております。加えて、職員の働き方も改革し、さらなる業務改善につなげるという三位一体でのDX推進を行っている状況です。
例えば、行政手続きが「スマホでらくらく」「スマートでらくらく」になるよう、窓口業務のDXを推進するためのプロジェクトを始動しました。副市長をトップとしたプロジェクトチームを発足し、全庁横断的な取り組みを行っています。
北九州市のトヨクモ製品利用状況
DX推進中の北九州市で活用しているローコードツールがkintoneです。そして、北九州市ではkintoneの機能を拡張してくれるプラグインやkintone連携サービスを活用しています。
今回はそのプラグイン・kintone連携サービスの内、行政には欠かせない通知や申請の機能を強化してくれるkintone連携サービスの活用事例をご紹介いたします。
北九州市で活用しているトヨクモ製品は以下の2つです。
FormBridgeにより、kintoneアカウントがない人でもWebフォームからkintoneにデータを登録できるようになるため申請・入力の機能として活用しています。
また、kViewerはkintoneのアカウントがない人に必要な情報をさまざまなレイアウトで閲覧させることができるため、通知の機能として役立ちます。
これらのトヨクモ製品を組み合わせることにより、より高度なことを実現できるのですが、今回は基本的な機能で行えることを中心に4つの事例をご紹介いたします。
1つ目は私が実際に作成した事例、その他3つはそれぞれの職場が行った事例になりますので、ぜひ参考にしてください。
事例1.新型コロナ陽性者への情報伝達
まずは、新型コロナ陽性となった方への情報伝達の事例についてお話しいたします。
コロナ流行当時、陽性となった方には感染拡大防止のため、一定期間外出の制限をお願いしていました。そのため、感染状況の聞き取りや療養中に利用する連絡先などの伝達を電話で実施していました。
体調相談、療養証明の交付、生活支援物資の申し込みなど、目的によって電話番号が異なるため複数の連絡先をお伝えする必要がありました。体調が優れない陽性者にとっては大きな負担となり、やり取りに大変時間がかかっていたのです。
また、療養期間中、食料等の調達が困難な方に生活支援物資をお届けする業務があったのですが、回線数の関係上、感染が拡大してくると電話がつながりにくくなっていました。
さらに、陽性者の方への配送なので非対面で配送する必要があり、物資の置き場所など聞き取る内容が多く、一件あたりの聞き取りにも時間がかかっていました。
年間15,000時間の業務改善を実現
そこで、kViewerとFormBridgeの出番です。
導入後も症状の聞き取りなど陽性者の方への連絡自体は行うのですが、通話後にSMSでkViewerのURLを送信することで、連絡事項や電話番号の情報共有を行いました。
これによって1人あたり約6分間も通話時間を短縮することができました。
また、生活支援物資の申し込みについては、電話申請に加えてFormBridgeによる電子申請を追加しました。
これにより、電話が話し中になる心配なしにいつでも申請が行えるようになっただけでなく、申請者が直接データを入力するため細かい聞き取りも不要になりました。
もちろん、Webでの閲覧や電子申請が困難な方には、これまで通りの電話対応を提供しております。それでも、年換算で約15,000時間もの業務改善という大きな成果を出すことができました。
コロナの感染には波があるため、ピーク時にもし電話だけの対応で進めていたら業務が回らなくなっていた可能性があります。
短時間で現場のニーズを反映し、システムを構築することができるローコードツールとkintone連携サービスの利点が発揮された事例となったのではないでしょうか。
事例2.学校の新型コロナ陽性報告
次は、新型コロナ陽性者情報に関する学校と教育委員会とのやり取りを効率化した事例です。
学校はたくさんの生徒が集まる場所なので、感染対策上、教育委員会はいち早く詳細な情報を把握する必要があります。
そのため、従来は各学校が陽性者の情報を把握すると、まず第一報で教育委員会に電話で報告していました。電話を受けた教育委員会は、ホワイトボードに記入して速報を共有します。
その後、各学校が詳細をWordで報告してくれるため、教育委員会はそれを印刷してから、Excelに入力して集計するという煩雑なフローになっていました。
リアルタイムの情報把握が可能に
ここにFormBridgeを用いたことで、各学校はkintoneで直接報告データを入力し、教育委員会はリアルタイムに報告内容を把握できるようになりました。
さらに、kViewerでToyokumo kintoneApp認証を利用することにより、各学校はkintoneに入力された自分の学校の過去データを一括管理できるようになりました。
こちらの効果が大きく、年間6,000時間の効率化を実現し、さらには手作業などのために配置していた応援職員も不要となりました。
小さな改善で大きな効果を生む
ここまでの2例のまとめとなります。今回の事例の他にも、行政の業務には申請や通知、報告作業などが多くあるかと思います。
これらの業務に対して、FormBridgeやkViewerを用いることで、申請・通知・報告といった作業のシステム化を簡単に実現することが可能です。
そして、実際の現場職員が内製に関わり、的確に作成することによって、単純な改善や小さな改善がスピーディーに大きな効果を生むこともあり得ます。
事例3.放置自転車通報フォーム
それでは、3つ目の事例紹介に移ります。
下記の画像は、放置自転車を市民が通報できるWebフォームです。
従来は電話受付でしたが、市のホームページからも報告できるようにしたものになります。
市民の方が報告しやすいように、地図情報に関する統合プラットフォーム「ArcGIS」とFormBridgeをAPI連携し、地図上で位置を指定できるようにしています。
市民からの報告が直接データとしてkintoneに登録されるため、受付や管理にかかる作業を効率化することができました。
このようにカスタマイズして、他社製品と連携できるのもFormBridgeの特徴です。
事例4.住民税非課税世帯に対する臨時特別給付金事業
最後は、住民税非課税世帯に対する臨時特別給付金事業での事例です。
この事業は複数回実施されたため、前回の申請情報と変わりない場合、前回の振込口座などをそのまま活用することができました。
従来はバーコード管理した確認書を対象者に郵送し、返送された大量の書類をチェックしていたため、人手で時間がかかり、何より返送されてきた書類の保管が大変でした。
業務負担と紙の保管問題を同時に解決
この作業を効率化するために、FormBridgeを用いた高度な申請システムの作成を委託しました。
完成したシステムでは、市民の方はスマホやPCで電子申請画面に入力し、そのデータをkintone側のマスター情報とハッシュ化したデータで照合します。照合した結果、申請対象者である場合のみ、入力を継続できるようにしました。
さらに、各項目の入力時にもチェックを実施し、入力エラーがあると先に進めないようにしたことで、不備のない申請のみを受付できるようになりました。
給付金事業はその性質上、迅速さが大切になりますが、1,000時間以上を効率化して作業時間を短縮した上、紙の保管場所の不足問題も解決できました。
なお、電子申請が困難な方もいらっしゃいますので、従来の郵送による申請も並行いたしました。
業務の「全移行」だけが道ではない
ここまでお話しした事例に共通するのは、電子申請と並行して従来の申請方法も継続していることです。
市民向けの申請は誰にでもできることが大前提です。そのため、システム化の話になると「電子申請が使えない人もいる」「デジタルと紙が混在したら余計煩雑になる」といった意見が出ることも多いかと思います。
しかし、お話しした事例のように、多くの人に電子申請を利用していただければ、業務量が大幅に削減され、紙の申請を継続してもなお大きな効果を上げられることが多いのです。
しかも、電子申請によって市民の利便性が向上するという定性的な効果も期待できます。
まとめ
今回は、トヨクモ製品とkintoneによる業務改善の事例をご紹介させていただきました。
業務改善を実践し継続するためには、みんながDXの必要性を認識し、成功だけでなく失敗も許される環境で、それらを共有し、次に活かすサイクルが必要です。
そのために欠かせないDX浸透の鍵となるのが、「トップダウンの意思決定」と「ボトムアップの意識改革」の両面の力だと考えています。
ローコードツールはスモールスタートできますし、短いサイクルで結果を出して、次につなげていく好環境を生み出すことが可能です。
日本各地、そして世界中にDXの芽が芽吹き、みんなが「スマートでらくらく」になる未来に向けて北九州も頑張ってまいります。本日はありがとうございました。