【kintone×医師会】電子決裁導入の舞台裏:トヨクモ製品の活用が光る業務改善事例!

私の業務改善シリーズでは、トヨクモやkintone界隈の方1人1人が「どのように業務をしているのか」「どのような業務改善を実施したのか」をご紹介していきます。
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一般社団法人 横浜市医師会は、横浜市内で従事している医師の会員団体です。開業医と勤務医が在籍し、約4,300人の会員が所属しています。

活動は予防接種事業や健診事業、地域医療連携センター事業、夜間急病センター運営事業、地域包括ケア事業など多岐にわたり、市民の保健・医療・福祉を支える団体です。

今回、横浜市医師会で、事業課の所属長として勤務され、近年は事務効率化の案件も手掛けている斎藤さんに、kintoneやトヨクモ製品を用いた業務改善事例についてお話しいただきました!

導入事例記事は、以下よりご覧いただけます。

kintone連携サービス活用事例 横浜市医師会 様 : コロナワクチン接種管理システムを、たった1か月で構築から運用ま…

自己紹介

ーこれまでのご経歴や、どのような業務をされてきたか教えてください。

大学卒業後、地域社会を支える仕事を希望し、2000年に横浜市医師会に入局しました。入局後は広報事業、地域保健事業、夜間急病センター、経理、総務等の業務を担当しました。

普段の業務は「事務総合職」として、各事業の運営を支える仕事をしています。現在は、地域の健診・予防接種事業と情報システムを所管する事業課の所属長を務めています。近年は、事務局内の事務効率化に関する案件も手掛けるようになりました。(斎藤さん)

kintoneと連携サービスを活用した業務改善事例

斎藤さんがkintoneやトヨクモ製品を用いて、実際に行われた業務改善について伺いました!

もう紙はいらない! ビジネスプロセスを変える電子決裁の成功体験

紙の文化が依然として根強く残っており、外部からの通知や内部での情報共有、さらには稟議書の回覧まで、ほぼ全ての業務に紙を使用していました。また年々紙の使用量が増加しており、書類の保管場所も確保する必要がありますが、これも限界に近づいていました。

そんな中、会館全体を改修しなければならないタイミングが来ました。

改修は、一度オフィスを別のフロアに移動させ、改修後そのフロアを原状回復する形を取りました。しかし、この工程は紙の書類の管理場所がますます不足することが予想されました。(斎藤さん)

問題
・紙文化が残っていること

対応
・決裁文書等のペーパーレス化を行った
・セキュリティを確保するため、多要素認証を導入した

効果
・各種クラウドサービスにSSO(シングルサインオン)でのアクセスが可能となった
・役員席に積まれていた稟議書の山がなくなった
・経理の処理漏れが減った

大幅なペーパーレス化が必要なため、電子決裁の導入が必要との結論が出ました。最初はkintoneのプロセス管理を活用する案も出されましたが、上位決裁者である役員は、普段は医療機関で勤務しながらも、それと並行して横浜市医師会の会館に足を運び、紙での決裁を行っていました。

kintoneのようなシステムを普段から使い慣れていない方が多いため、kintoneの使用はハードルが高いのではと懸念していました。

上位決裁者がスムーズに使えることを大事にしたかったので、電子決裁システムである「コラボフロー」を採用しました。エクセルの決裁文書を簡単にデジタル化できる構築性と、操作性もシンプルで、さらにはkintoneとの連携も可能な点が導入の理由です。会計業務をより効率的に行うため、特にkintoneとの連携方法は力を入れて模索しました。

「コラボフロー」は、操作画面が非常にわかりやすく、メールソフトのような見た目をしています。

操作画面(受信画面)では、自分が承認を担当する稟議が一覧で表示され、それぞれのタイトルをクリックすると稟議書を閲覧できます。内容を確認して、承認ボタンを押すと承認が完了します。

送信画面では、自分が起案した稟議書が申請中なのか、既に承認されているのかがひと目で分かるように表示されます。

電子決裁の内容には職員の個人情報や他団体との取引金額などの情報も含まれるため、導入にあたりセキュリティ面は重視しました。

これまで利用してきたクラウドサービスにもIDとパスワードによる情報保護が行われていましたが、稟議書の機密性を考えると、より強固なセキュリティを構築する必要があったのです。

具体的には、インターネットバンキングと同様に多要素認証を導入するため、海外製のサービス「okta」を採用しました。IDとパスワード、ログインする本人だけが持つ情報をログイン情報として、ユーザーのスマートフォンにoktaのアプリを入れ、二重認証を行いました。

決裁者がoktaの取扱いに慣れるよう、最初は電子決裁ではなくokta単体を導入し、まずは使い方を覚えて練習をしていただきました。oktaではSSO(シングルサインオン:一度のユーザー認証で複数のシステムを使用できる機能のこと)も使用できます。oktaの使い方に慣れていただいた後に、電子決裁やその他の各種クラウドサービスにアクセスできるようにしました。

収入や支出が発生する稟議書の場合、経理部門に対して、決裁完了後に支払いの実行を連絡する必要があります。紙で回していた際は、決裁済みの稟議書をコピーして経理に提出していました。この手順も電子化する必要があります。

電子決裁サービスでは、全ての承認フローが完了したらその旨を経理部門に通知する機能はありましたが、自動通知と処理漏れを減らす仕組み構築の必要性を感じ、kintoneとの連携に着手しました。

まず、稟議書を作成すると、その中での収入・支出の有無を確認し、その内容を経理部が閲覧するアプリに転記されるようにしました。

決裁者が処理を行うたびにデータは更新されます。起票した際には、「決裁が進行中であること」経理役員が承認を行うと「承認が完了したこと」が分かるようにステータスが変更されます。この仕組みを構築し、紙での申請・承認を可能な限り減らしました。

結果として、これまで決裁者である役員の席に積まれていた稟議書の山がなくなりました。また、決裁が完了すると、自動的にkintoneにデータが記録され、経理部門に通知が送信されるため、処理の漏れが大幅に減少しました。(斎藤さん)

ー稟議書の山が消えたとのことですが、電子決裁の導入前は、どのくらいの量の書類がありましたか?

1人あたり1日10件以上の稟議書や回覧文書があったので、相当な数だったと思います。

会館改修に際し、新しいオフィスのコンセプトが掲げられ、その一環として役員室は、従来のテーブルをやめて、開かれた雰囲気を演出するために、稟議書を入れる決裁箱のないカフェテーブルを置く構想でした。

いわゆるフリーアドレス形式で、決裁者も好きな席に座って仕事をするスタイルを目指していたので、電子決裁の仕組み構築は不可欠でした。(斎藤さん)

ー会館の改修も業務の電子化が目的の一つだったのですか?

そうですね。横浜市医師会は医療従事者や介護従事者を養成するための研修会や講演会を開催しています。

大人数を集めるとなると広い部屋が必要でしたが、当時の会館内にはなかったため外部の会議室などを借りていました。

しかし、コロナ禍においてはそもそも人を集めることもできず、外部の会議室も使用できなかったため、将来同様の事象が発生しても、会館内で対応できるようにすることも改修目的の一つでした。

そのため、業務エリアを縮小し、研修会や講演会が開催できるエリアを確保しました。業務エリアの縮小も紙の削減は必須だったため、今回の取り組みで解決できましたね。(斎藤さん)

ーコラボフローとkintoneを連携されたとありましたが、kintoneはコラボフローを入れる前から使われていましたか?

新型コロナワクチンの集団接種会場への人員派遣事業を受託した際に、kintoneとトヨクモ製品であるFormBridge、kViewer、PrintCreatorを組み合わせて事業を展開したため、元々導入していました。

また、本部の職員はkintoneのアカウントが与えられていますが、外部の看護学校などはまだkintoneを導入していません。ただし、外部とも決裁の業務は発生するため、経理との連携アプリをkViewerを使用して外部の拠点でも閲覧可能とし、登録情報の変更にはFormBridgeを利用しています。(斎藤さん)

ー連携サービスはさまざまありますが、トヨクモ製品を知ったきっかけは何かありますか?

ワクチンの集団接種事業については、外部への再委託を考えていましたが、4〜5ヶ月で1億円以上の見積もりが示され、委託は難しいと判断しました。ギリギリまでそもそも受託するか否かを検討していましたが、最終的には1ヶ月足らずで事務員が全システムを構築しました。

医師だけでなく、看護師を市内から募集し、1日に最大30数カ所の集団接種会場に人員を派遣していました。この際、シフトを組んで看護師と情報共有しながら集団接種を進める必要があります。それには、kintoneでデータを管理することも必要ですが、登録した看護師に対して、いつどこの会場に行けばいいのか、それに対していくらの報酬が支払われるかを連絡する必要もありました。

しかし、登録している看護師は3,000人以上もいたため、全員に対しての個別の連絡は現実的ではありません。そこで、kViewerのMyページを活用しました。

看護師の方々は、kViewerを使ってMyページにアクセスしPrintCreatorを使えば、各月のシフト表と各会場での勤務時間を確認・出力できます。
各月の報酬についても何回勤務し、それに対していくらを支給されるかを給与明細のような形で表示できるようにしました。

トヨクモ製品はkintone内の情報を外部に発信・共有する方法を模索していた時に、検索で最初に目についたのがkViewerでした。PrintCreatorとの連携、コスト、操作画面の見やすさが魅力的でしたね。(斎藤さん)

「ペーパーレス打合せアプリ」で効率アップ!施設改修を機に導入した嬉しい変化

会館の改修時、役員室が工事で利用できない期間がありました。役員は、他の団体や自治体の職員とさまざまな打合せを行い、その際にたくさんの紙の資料が発生します。

役員室が使えていた時は打合せ後、資料を各自の机やロッカーに収納していましたが、工事期間は収納する場所がありませんでした。(斎藤さん)

問題
・施設の改修で紙の収納場所に困っていた

対応
・「ペーパーレス打合せアプリ」を作成した

効果
・紙の資料の管理が不要になった
・会館に来る前にも事前に打合せ内容の確認が可能となった
・以前の打合せの検索が容易になった

定例の会議では、会議資料をWeb上で共有し、参加者全員が閲覧できるようにしていましたが、通常の打合せでは紙で見ていました。

「会議はペーパーレスなのに、なぜ通常の打合せでは紙が使われているのか?」という役員からの疑問や、今回の役員室の改修の状況も踏まえて、kintoneで「ペーパーレス打合せアプリ」を作成しました。

打合せ日時、打合せの議題、資料、事業部、担当役員などが表示される、シンプルな構成です。役員にはkViewerで見せるようにしました。kViewerでは、担当役員ごとに絞り込み設定を行い、その役員のパソコンのデスクトップに打合せアプリのkViewerのショートカットを準備しました。

これにより、まずはペーパーレスが実現できます。かつ、役員が来所する前にも資料の事前確認ができます。

また、以前に同様の内容の打合せが行われた際、その時の内容を振り返るために資料を探すという作業がよく発生していました。これも、kintone内に検索フィールドを作っているため、打合せタイトルなどを検索すれば簡単に資料が見つかるようになりました。

以上の取り組みにより、会議・打合せ資料・稟議書の全てのペーパーレスを実現できました。

kintoneのアプリには外部や特定の人には必要な情報・不要な情報もありますが、kViewerは公開したい情報だけを見せられるよう設定できる点も非常に便利でしたね。

また、会館のサイネージ(会議室の予定表示)アプリも作っており、「ペーパーレス打合せアプリ」のレコードから連携できるようになっています。打合せは会議室でやることが多いため、アクションボタンで、サイネージの予約も可能です。(斎藤さん)

今後の展望

エンジニアのいない事務局ですが、kintoneやトヨクモ製品を活用することで、電子決裁システムはノーコードで構築できました。このようなサービスを活用すれば、地方の自治会や小さな団体でも、業務改善や新たな事業の展開ができると思います。(斎藤さん)

「今回の内容は、日本医師会でも発表させて頂きましたが、反響もあり、kintoneとトヨクモ製品を入れたいという問い合わせも入ってきています。医師会は競合ではないので、同じような業務改善を横や上へ広げていければと思います。」と締めてくれました。

斎藤 健

地域社会を支える仕事を希望し2000年に横浜市医師会へ入局
入局後は広報事業、地域保健事業、夜間急病センター、経理、総務等の業務を担当
現在は、地域の健診・予防接種事業と情報システムを所管する事業課の所属長に就任
近年は、事務局内の事務効率化に関する案件も手掛けている