社労士×kintoneの業務改善は私たちにお任せを!属人化を防ぐ業務管理システムの構築

私の業務改善シリーズでは、トヨクモやkintone界隈の方1人1人が「どのように業務をしているのか」「どのような業務改善を実施したのか」をご紹介していきます。
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社会保険労務士法人 日本経営労務は、1999年創業の横浜・東京・北海道に拠点をもつ社会保険労務士法人です。顧問先の成長と発展に貢献する「経営派社労士」として顧問先へただ事務代行をするだけでなく、労務トラブルの防止や社員を定着させる施策などの提案を積極的に行っています。

今回は、社内の業務改善や、顧問先へのバックオフィス業務効率化のためのITツール導入支援などを行われている川村さんに、kintoneとの出会い、kintoneやトヨクモ製品を用いた業務改善事例についてお話しいただきました!

導入事例記事は、以下よりご覧いただけます。

kintone連携サービス活用事例 社会保険労務士法人 日本経営労務様 : 面倒なパスワード管理を削減、kintoneで…

自己紹介・kintoneに出会ったきっかけ

ーこれまでのご経歴や、どのような業務をされてきたか教えてください。

大学卒業後、総務・経理・デザイン等の仕事をしたのち、2013年に社会保険労務士法人 日本経営労務に入社しました。入社当初より、顧問先の労務相談、手続き業務や給与計算を行っていました。その傍ら、PC操作やエクセルが得意であったため、手計算で行っていた給与計算のエExcelマクロでの自動化、労務テック・RPAの導入、テレワーク環境の整備等を進めました。

自社業務をIT化することで目に見えて生産性が上がったこと、業界としてもDX化のトレンドが来ていたことから、私の仕事内容も、IT業務のウェイトが上がってきました。業務のIT化は、問題解決や業務時間の削減に効果をあげて喜ばれるため、やりがいがあります。

しかし、その半面社内からの要望がどんどん膨らみ、ITを作る側にタスクや課題が積み上がり、要望の水準も高くなっていき大変さを感じています。従来のエクセル中心の業務管理に限界を感じていたところにkintone・トヨクモ製品に出会い、今回紹介するような業務改善を進めています。

kintoneと連携サービスを活用した業務改善事例

社労士の業務は多岐に渡ります。担当となった顧問先に対して「労務相談」「社会保険や雇用保険の届出」「給与計算」といった複数の業務に対応します。

また相談や届出も常に複数の案件を抱えています。顧問先数×業務の種類×個々の案件といった膨大な数の案件管理・タスク管理・スケジュール管理が必要でした。

【kintone×krewSheet×kViewer】属人化の達人をも満足させるシステムを

社労士は顧問先の会社に代わり、役所等へ提出する書類の作成・届出を行っています。新たに社員が入社したら雇用保険・社会保険の資格取得届、退職したら同喪失届・離職票、家族が増えたり減ったりしたら扶養異動届、労災事故なら労災書類とその数は膨大です。

それらの「連絡を受ける」→「書類を作成する」→「役所に届け出る」→「役所から決定通知が帰ってくる」→「お客様に決定通知を返却する」といった進捗を管理しないといけません。同時進行中の届出の数が膨大なうえ、中には手続き完了までに半年ほどかかるものもあり、担当者は何かを漏らすリスクに絶えず直面していました。

また、お客様から状況確認の問い合わせが頻繁に来るため、個々の進捗状況に即答できる管理体制が必要です。電話対応に膨大な時間を取られていたことも課題であると感じていました。

私の入社以前は、この案件管理を、顧問先一社ごとのスプレッドシートで行っていました。20社の顧問先をもつ担当者は20種類のスプレッドシートを管理する必要がありました。このスプレッドシートの全顧問先の案件を、自動採番して1つのスプレッドシートに入れるように修正しましたが、1つのシートの案件レコードは1万レコードあたりが限界です。それ以上はファイルが重くなり使えたものではありません。

そのため、レコードが溜まる度に、保管用のシートに移し替える作業を何度もしなくてはなりませんでした。また、スプレッドシートは新規レコードを作る度に、毎回同じ名前で「会社名」や「届出名」を入力する手間がかかります。この効率の悪さも社内から不評でした。

会社が用意した管理ツールが重い・遅い・不便などで使えない場合、各社員たちは、そのツールを使わず、机に手書きの進捗メモを貼りだしたり、自分だけのExcelを作りだしたりします。誰もが快適で安心して使ってもらえる管理ツールが必要でした。

問題
・届出が多く、作業にかかる期間も様々なため、進捗管理に苦労していた
・管理ツールを用意しても、不便な点があると使ってもらえない

対応
・スプレッドシートをkintoneに置き換えた
・krewSheetで慣れ親しんだスタイルで使えるようにした
・kViewerで情報を顧問先にリアルタイムで公開した

効果
・使用感に満足できるシステムの構築ができた

システム導入前は、既に各従業員が個人単位での業務管理方法が確立していました。そのため、目に見えて便利で使い勝手が良く案件管理ができないと、このまま自分のスタイルで管理する方が良いと言われてしまいます。

ー個々人がそれぞれのやり方に固執してしまうと属人化が進んでしまいますね。

そうですね。そのような属人化の達人にも納得してもらえるようなシステムが必要でした。

まず、何万レコードにも対応できるツールとしてkintoneを導入し、アプリで案件管理・進捗管理を行いました。ただ、Excelに慣れている人が多く、kintoneを導入すると、Excel対kintoneの構造ができあがってしまいます。kintoneは一覧画面での編集がしづらいので、kintoneを導入するだけでは、Excel派に惨敗してしまいます。そこでkrewSheetを導入しました。

Excelに慣れ親しんだ弊社の従業員も操作性に満足しています。またkrewSheetによってレコードの「条件付き書式」が設定できるため、進捗ステータスごとに書式を変えることで進捗管理がとてもスムーズになりました。

また、この案件管理アプリをkViewer(ケイビューワー)のToyokumo kintoneApp認証で顧問先に公開し、「貴社案件の手続きの現状況」を24時間いつでも確認できる状態にしました。これにより電話で進捗の問合せを受けることがなくなりました。また、常に顧問先に進捗状況が見られていることで弊社の担当者にも良い緊張感が生まれました。

※キャプチャ内のデータはサンプルです

ーkrewSheetはどのような経緯で知りましたか?

同業種の方に話を聞いたり、「kintoneのExcel化」などで検索したりして知りました。

ーkintoneのプラグインや、社労士業務での活用方法はどのように調べていますか?

「kintone 社労士」で検索かけたり、最近はYouTubeでも見たりしています。また、社労士コンサルに入っていて、最近は士業へkintone導入がトレンドらしく、kintone自体は社労士コンサルから教えてもらいました。

【FormBridge×kViewer】顧客とのやりとりを一本化!対応が必要な相談を見える化

お客様からの労務のご相談はメールや電話、チャットワークなどで五月雨式に届きます。その場で解決するご相談もあれば、対応に時間がかかるご相談もあり、連絡媒体、相談案件のカテゴリー分け、解決・未解決、現在誰が対応しているか、といった情報を一元管理する必要があります。

また、メールもチャットも古い話題はどんどん後ろに埋もれていきます。これといった管理ツールがなく、案件の総数・優先度・回答期限などを担当者の頭や手帳にいれて置くしかない状態でした。

問題
・既存の連絡ツールだと、古い相談が埋もれてしまう

対応
・FormBridgeを導入し、問い合わせを一本化した
・kViewerを導入し、ステータスでの絞り込みを行った

効果
・情報の新旧に関わらず、必要な情報が確認できるようになった

労務相談は、kintoneに専用アプリを作り、入力窓口はFormBridge(フォームブリッジ)で作成しました。これにより、以前は窓口がメールや電話等バラバラだったものが、フォームに一本化できました。相談はkintoneアプリに自動で蓄積されるため管理がとてもしやすくなりました。

また、弊社の返答や顧問先からの再返答も、kViewerと連携したFormBridgeで、既存の相談レコードが更新できるようにしました。そのためチャット感覚での既存の書き込み確認や、追加メッセージの登録が行えます。

このアプリでは案件の状況を「完了・未完了」「対応者が顧客・社労士」というステータスで管理しています。顧客用のkViewerではToyokumo kintoneApp認証で絞り込みをかけて「未完了で対応者が顧客」の相談レコードのみを表示させました。

※キャプチャ内のデータはサンプルです

 

※キャプチャ内のデータはサンプルです

また、弊社職員用のkViewerには同様に「未完了で対応者が社労士」の相談レコードのみを表示し、「完了」のレコードはお互いのkViewerからは見えないようにしています。こうして、両方が数ある相談案件の中で「未完了で自分が対応必要なレコード」のみを確認できるようになりました。

ー御社の職員の方は、kintoneのアカウントを持っていない方もいらっしゃいますか?

全員持っていますが、kViewerで管理した方が楽なことや、FormBridgeの方が入力しやすいこともあるので、kViewerで職員マイページを用意しています。

ーカスタマイズを実装している箇所はありますか?

kViewerとFormBridgeで会話のキャッチボールをする部分で、カスタマイズを入れてあります。同時に編集をしてしまうと、後に編集した人の情報に上書きされてしまうため、上書きを防ぐ機能を入れてあります。また、テーブル形式で会話を行っているのですが、行の削除をしたり、既存の行を編集したりしてしまうと会話の改ざんが可能になってしまいます。そのため、行の削除ボタンの非表示と、既存の行の編集もできないようなカスタマイズも設定しています。

ー他にも他社の連携サービスがあると思いますが、FormBridgeとkViewerを選ばれた理由はありますか?

他社の連携サービスは、FormBridgeとkViewerの導入後に存在を知ったため試していません。トヨクモ製品は、社労士コンサルや、当時サイボウズの社員と話していた際に、紹介されて知りました。

ー導入のハードルは高そうですが、スムーズに進みましたか?

すでにコストをかけてkintoneの導入をしていましたが、使いづらいという意見が出ていました。しかし、ここでkintoneを放棄するより、連携サービスを入れた方が費用対効果の面で元が取れると判断しました。また、トヨクモ製品は複数の業務に使っていっても費用が変わらないため横展開が可能という点も、社内の承認の手助けとなりました。

【給与計算の期限日管理】顧問先の共有情報の確認の負荷削減

給与計算は、顧問先から勤怠・額面等のデータをもらい社労士が計算して、顧問先が給与を確認して確定します。その後、社労士は明細や銀行振込データを作成します。顧問先との二人三脚で、毎月の支払日に必ず間に合わせなくてはなりません。

社労士は複数の顧問先の給与計算を抱えています。毎月カレンダーで期限管理をしつつ、それぞれの顧問先とそのカレンダーを共有して、毎月の給与計算を処理していかなくてはなりません。

顧問先とのスケジュールと期限の共有は給与計算上、とても重要です。「給与支払日」から逆算して「データ確定日」「給与確定日」「銀行振込日」といった日を決めるのですが、それらは土日祝日で毎月微妙にズレが生じます。

そこで毎年年末に、次の年の毎月の給与計算スケジュールカレンダーをつくって顧問先に渡していたのですが、顧問先にはカレンダーを保管し毎月確認する負荷をかけていました。(川村氏)

問題
・年始に渡したカレンダーを顧問先に保管してもらう必要がある

対応
・kintoneで、カレンダーアプリを作成し、kViewerで顧客に共有した

効果
・スケジュールの確認が容易になった

給与計算のための、顧問先ごとの「データ確定日」「給与確定日」「給与支払日」の年月日をkintoneのカレンダーアプリに登録し、給与計算担当者がスケジュールを確認できるようにしました。さらにこのカレンダーアプリをkViewerとToyokumo kintoneApp認証を用いて共有することにより、顧問先も給与計算に関わるスケジュールをカレンダーに印刷したり、書き込んだりする必要はなくなりました。

※キャプチャ内のデータはサンプルです

ー給与計算は、別のソフトを使われていますか?

はい。ただ、社労士の期限管理までできているソフトはないので、そこを補うためにkintoneとkViewerを用いました。

【FormBridge×kViewer】窓口の一元化!確認のやりとりが減少し双方の業務がスムーズに!

社労士の業務の多くは、顧問先の業務を専門家である社労士が代行する、所謂「代行業務」です。そのため顧問先に、依頼内容、従業員や家族の名前や生年月日、退職社員の退職理由、労災事故の起きた日や現場など、書類作成のためのデータを正確にいただく必要があります。

従来は、依頼連絡の種類ごとに、書類作成に必要な情報を書いてもらう入力用紙をエクセルで作り、顧問先からメール添付やFAXでもらっていたり、メールや電話で直接依頼がくるのでその都度対応したりしていました。

その結果、受け取る情報に未入力や不足、誤りのある項目が多数見られ、再度の確認や貰い直しに負荷がかかっていました。また、エクセルやFAXやメールで情報を受け取ると、書類作成のソフトへの転記が必要となり、ここでも入力ミスや漏れが生じます。

そしてここでも、メール・電話・FAXなど様々な媒介でくる案件の管理に追われていました。

問題
・顧問先からもらう書類作成に必要なデータの不備が多い
・書類作成ソフトへの転記でミスや漏れが発生
・連絡ツールの煩雑化

対応
・各依頼ごとのフォームを、FormBridgeで作成

効果
・窓口の一元化
・データの貰い直しの削減
・対応漏れの防止

依頼いただく業務内容ごとのFormBridgeをつくり、顧問先はそこから各種の業務依頼を行っていただくこととしました。フォームごとに目的と入力項目がはっきりしているため、データの貰い直しを大きく減らすことができました。

※キャプチャ内のデータはサンプルです

FormBridgeを使うことで、依頼があった際に弊社担当者に通知メールが届きます。また、依頼に対応したkintoneのアプリにデータが登録されるため、そのレコードで対応済・未対応の管理を行います。

またFormBridgeにおいてもToyokumo kintoneApp認証・kViewer連携・ルックアップ機能・パラメータ機能を使うことにより、入力する顧問先側がフォームを開けばあらかじめ会社名が入っている等、入力の手間を大幅に減らすことができました。会社名の自動入力は、例えば「A社」「株式会社A」「A」といった「入力のブレ」を防げるため、我々にとっても非常に有用でした。

全ての情報が1ページで!顧問先マイページ!

FormBridgeとkViewerを複数作成し、顧問先と共有することで様々な課題の解決につながりました。しかし、FormBridge・kViewerが複数あることで取り扱いの問題が生じました。顧問先に複数のURLをお気に入り登録してもらうのも大変です。

問題
・FormBridge・kViewerを複数作成したことで、顧問先のフォーム・ビューの管理が大変になった

対応
・kViewerのダッシュボードビューで一元管理した

効果
・1ページで弊社との連絡・情報共有がまとめて見られるように

複雑になっていたURLをダッシュボードビューを用いて、1つのURLにアクセスすれば、それらのページが全てまとめて見られるようにしました。それを1ページでお客様が弊社と全ての連絡・情報共有が可能な「顧問先マイページ」と命名しました。

※キャプチャ内のデータはサンプルです

ここではToyokumo kintoneApp認証により、A社ならA社についての情報のみを共有するだけでなく、そのA社の「人事担当者」「経理担当者」といった一人ひとりのユーザーにとって必要な情報・必要ではない(見せてはいけない)情報を分別して、共有を可能としています。

ーまとめて色々なアプリの情報を一覧ページで見られると確認しやすいですね!

ダッシュボード機能を追加したタイミングでは簡易認証機能での実装が難しかったのですが、そこにToyokumo kintoneApp認証が導入され問題が解消されたので、晴れて「顧問先マイページ」を公開できました。

今後の展望

kintoneもトヨクモ製品もまだまだ多くの可能性をもったツールです。さらに活用して業務の効率や生産性の向上を進めたいと考えています。一方で、さまざまなアプリ・ビュー・フォームを作り続けた結果、その総数が多く管理も大変になってきました。これらを整理し、よりスマートな運営体制をつくるフェーズに入ったと感じています。

現在、弊社で得られた知見や事例は、DX化の課題や業務効率化に悩む、顧問先やもっと広いお客様にも発展できるものと確信しています。それらをパッケージングし、お客様側でも使えるようなサービスを開発しています。既に導入いただいたお客様からは好感触をいただいております。「もっとここを良くして」というリクエストも多くいただき、さらに良いものになるよう改善の取り組みを徹底していますね。

「今後はすでにkintoneやトヨクモ製品を愛用されているような会社様やその担当者様ともつながって、お互いにより便利なもの・お互いに企業価値を高めるものを作っていきたいと考えています。」と川村氏は締めてくれました。

川村 友彦(かわむら ともひこ)さん

総務・経理・デザイン等の仕事を経験したのち、2013年社会保険労務士法人 日本経営労務に入社。
自社や顧問先の業務改善を、kintoneやトヨクモ製品を用いて推進している。