失われた30年から見えてくる、DXに必要な仲間づくりの方法とは

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。

2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。

今回は、伊藤羊一氏に語っていただきました。
失われた30年やアメリカの成長から見えてくる、これからの日本に必要な「仲間作り」の方法について語っていただきましたので、ひとり情シスで周りともっと上手にコミュニケーションをとりたいと感じている方はぜひご一読ください。

自己紹介

伊藤 羊一 (いとう よういち)
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長
Musashino Valley 代表
LINEヤフーアカデミア 学長
Voicyパーソナリティ

日本オワコン?日本が抱えている問題、それをどうすればいいのか

仲間づくりの方法と言っても、特にイメージとしてはひとり情シスの方が「なんだよ、全部押し付けやがってよ」と言いながら、コミュニケーションも足りていない方をイメージし,じゃあどうしたらいいかみたいなことから話していきたいなと思います。

まずは大きな話から始めようと思います。
日本が抱えている問題や、それをどうしたらいいのかみたいなことを考えてもらいたいなと思います。

「失われた30年」の話をするときに必ず出てくるのが、株式時価総額ランキングです。
比較される対象は必ず日経平均株価が一番高かった1989年です。上位10社中7社、50社中32社がなんと日本の会社だったんですね。

それがどうなったかというと、資料を見てお分かりの通り、トップ10には1社も入っていないという状況です。

株価は移ろいゆくものだからこれだけでああだこうだ言えるわけではないですけど、日本の国際競争力は転がり続ける一方です。
日本の国際競争力は1989年から1992年まで世界1位だったんです。ここから転がる石のように下がっていき2023年には35位になってしまいました。問題は国際競争力が復活する気配がまったくないということです。

分岐点は1995年


こちらはGDPの図です。国で生み出された富の合計のことです。
1980年から2020年までの40年の推移です。
こうしてみるとアメリカ、中国はすごいですね。日本はドイツにもインドにも抜かれる予定で世界5位の国になることがほぼ確実になっています。

アメリカも中国も傾きが急ですよね。日本だけずっと横ばいで成長してないんですよ。ここが「失われた30年」ですよね。1995年以前はアメリカとほぼ平行に成長しててアメリカの7割のGDPを稼いでいました。

しかし95年を境に日本はまるで違う国になったかのように落ちているんですよね。明らかにおかしいですよね。95年はWindows95の発売年。つまりインターネット元年なんですよね。

今をときめくエヌビディアは1993年にできました。このような会社が出てきたのがアメリカで出てこなかったのが日本です。この違いってなんなんですかね。GAFAとか、テックジャイアントとか一体なんなんでしょうか。

これらというのは個人の妄想を形にした会社ですよね。Facebookはハーバード中の女子寮から生徒の情報をハッキングしたのが始まりです。Amazonはジェフベゾスがウォールマートから届けてほしいという妄想から生まれ、X(旧Twitter)は140字ぐらいで世界中の人たちと情報交換できたら楽しいだろうなあという妄想から始まりました。

こういう会社が生まれてきたのがアメリカ、生まれなかったのが日本、この差はなんなのでしょうか。実はこれらの差が、チーム作りやマネジメントにおいて日本に足りなくてアメリカにあるものだと思います。

組織のあり方が変化

マネジメントや教育は全部1995年の前と後に分けられると思います。
昔のヒエラルキーに基づく「タテの社会」においてはマネージャーは教えて育てる。「これをやるのだ!はいわかりました!」と言ったような上位下達、画一性が求められていました。

そのため正解を早く正確に出すことにおいては日本は圧倒的にアメリカより強かったのです。しかしこれは本来変わらなければいけないものだったんですよね。

フラットな「ヨコの社会」」になって何が変わらなくてはいけないのかというと、教えて育てるから、対話と議論の場づくりが必要になっているし、上位下達ではなくフラットに一人ひとりのコミュニティーが大事になっているんですよね。また、全員が同じ回答をしたら、つまらないし聞く意味がないですよね。

つまり画一性ではなく、みんな違ってみんないい、ダイバーシティが大切なんです。
みんな違ってみんないいのベースとなっているものは、「自分の想い」です。
一人ひとりの意見なんて違うに決まっているんです。

だからリーダーはみんなの意見を捌いていくファシリテーション能力だったり、一人ひとりの意見を聴く1on1も大事。ダイバーシティや、自分の想いをもったアントレプレナーシップも大切です。

これらが今の社会の大前提であると思っています。こういう社員が集っている会社にしたいし、話し合った方が形になると思います。

理想の社会やチームを作る極意

1.たくさん話そう

話さないと始まりません。
当たり前のことだと思われますが、大学の仕事をして確信したことです。

アントレプレナーシップとは、高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を創造していくマインド。
これは起業家、サラリーマンだろうが、誰にでも必要なマインドです。

内省と対話。
まずは刺激を受けてインプットすることがとても大事です。そうするとAha!となってやってみる。プログラミングなどをしている方ならわかりやすいかと思いますが、やってみて初めて学びになります。

「みんなで話してみる」ここが個別解的に思われていました。
つまり、「あいつはいけてるからな〜」とか「あいつはもともと優秀だからな〜」と言って誤魔化していました。

一人で考えていると、いいことを思いついても翌日盛り下がることありますよね。
しかしみんなで話していると夜まで盛り上がって明日絶対やってみようとなるんですよね。
この繰り返しで成長していきます。みんなで話すということが大事なのです。

さらに大事なことは「みんなで夢を話すこと」です。
あなた自身の夢を語っていますか?誰かから夢を語られていますか?
「〇〇したいんだけどさ〜」と自分から言ったり、「〇〇したいからサポートしてくれない?」と相手から言われたり、そういう会話があるといいなと思います。とにかく「こうしたいよね」というような夢を話すことが超重要です。

2.じっくり聞こう

仕事上、会社のことや組織間の問題は大抵コミュニケーションの問題だなと思っていて、話せばわかることなんですよね。でも話せてますか?「話す」ということは、自分も話すけど相手の話も聞くということなんです。じっくり聞くかそうじゃ無いかによって向こうのノリもこっちの理解も当然変わってくるんですよ。

僕は1対1で話そうよということで1on1ミーティングをやったらいいんじゃないかと話しています。

1on1ミーティング:マネージャーがメンバーのために、定期的に時間を割き、メンバーの話に耳を傾けることを通して、目標達成と成長を支援する場。

ちなみにLINEヤフーでは、上司とメンバーでも1on1しますけど、斜めの関係で1on1をすることもできます。
〇〇の担当同士で何かやるにあたって、仕事の場ではまとまらないから時間を作って1on1してじっくり話を聞くようにしています。

他の部署が何考えているのか、どうして欲しいのかというようなことは会議の場ではなく、1on1をすることによって聞いています。
皆さんがひとり情シスで何かサポートする立場ならそのようなこと(1on1の時間を作り相手の話をじっくり聞いてあげること)をしてあげればいいんじゃないかと思います。

つまり相手の話に耳を傾けることが超大事です。
会議のオフィシャルでは無いところ、昔のタバコ部屋のコミュニケーションをもう少しオフィシャルにした感じで耳を傾けてみたらいかがでしょうか。

1on1は、話す時間ではなく、聴く時間。これさえ分かっていれば1on1は上手にいきます。
自分の言いたいことをいう時間ではなく、とにかくあなたの話を聞かせてという時間にして言いたいことを我慢すると、どんどん相手も話してくれます。相手が話してくれればくれるほど、皆さんの仕事にとってヒントが詰まるようになってきます。
話す時間ではなく、聞く時間だということを意識してください。
声をかけた時にいかにも俺は忙しい、声をかけられたから返事してるぞというような態度だと話もしてこないじゃないですか。だから相手の方を向く姿勢とかうなずきは大事なんですよね。

返事もただ「はい、はい」と言うのではなく、いろんなパターンがありますよね。日本人は返事で自分がどう思っているのか表現できるのでいろんな返事をしましょう。

質問に関しては具体と抽象の行き来や掘り下げたり広げたりして相手にたくさん喋ってもらうようにしましょう。

3 わちゃわちゃ共に考えよう

「共に考える。」当たり前のことを言っていますが、仕事でできていますか?これらは意識しないとなかなかできないと思います。コンフリクトってなんで起きるのかと言うと、お互い自分の立場で話しているからなんですよね。

自分の立場から出ないと、コンフリクトは起きてしまうんです。例えば経理と営業の間で伝票のことで揉めるみたいな感じですね。
だから抽象化して「俺たちのゴールってこうだよね。」と言ったように自分たちの目指すゴールを決めてそれを共有することが大事になるんですね。

でもそれってちょっと大きすぎるからちょっと下って、「うちの今のビジネスにおいてはこう」とか、「今の部門においてこう」みたいに具体的に下りてくれば、だからここでコンフリクト起きているのかということや、こういう風に考えればできるよねといった解決策が出てくるんですよね。

これらの具体的な分かりやすい例として「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が挙げられます。

この会社は「我が心情」と言うものを社員みんなで共有しているんですね。
(伊藤氏が)ジョンソン・エンド・ジョンソンの講演会に行った時も物流センターを見せに行ってもらったときも「我が心情」を説明されたんです。

社内でも、あらゆるところで我が心情の共有を徹底しているんです。共有することで自分たちの共通項がはっきりし、コンフリクトが起きづらいということなんですよ。
つまりわちゃわちゃ共に考えるということは、共通のゴールに向かおうということが超大事なんですよね。

おわりに

結局、話せば分かると。(笑)でも話さなければ分からないんですよね。だからたくさん話そうということです。
「話せばわかる」「じっくり聞こう」「わちゃわちゃ共に考えよう」めちゃめちゃ簡単に言ってますけど、意識して日々のコミュニケーションに生かしていただきたいなと思います。
これが仲間づくりのために何より一番大切なことだと思ってます。
ひとり情シスの方は一人じゃないんだと、今回話したことを意識して実現してもらいたいと思います。
日本の失われた30年を乗り越え、たくさん話して未来を作っていきましょう!