トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。
2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。
今回は、サイボウズ株式会社 公共グループ 瀬戸口紳悟氏に語っていただきました。
はじめに
皆さん、こんにちは。サイボウズ株式会社 公共担当の瀬戸口と申します。
本日はkintoneを活用した自治体DXの取り組みということで、自治体での最近の動向や活用事例を中心にお話しさせていただきます。
まずkintoneと自治体DXという形でkintone自体のお話しをさせていただき、その後自治体でkintoneがどのように使われているのか、活用事例も含めてご紹介いたします。
自治体のデジタル化に存在する壁
これまで、自治体のデジタル化、DXでは民間とは一味違った壁が存在しており、ましてや自治体特有のニッチな業務が多いゆえに以下のような問題を抱えていました。
- 適したパッケージソフトがない
- 自治体独自の小規模な業務に独自開発の予算が取りにくい
- 予算の枠組みで動くため時間がかかる
仮に予算が取れても、プロジェクトの始動が翌年度になり、そこから業者を選定して構築していくとなると、実際に業務改善されるのが2〜3年後といったことも珍しくありません。
また、自治体特有の壁として2〜3年スパンの人事異動があり、部署が変わっていくため、前任者が作成したツールがなかなか引き継がれないという側面もあります。
そのため、自治体の現場ではデジタル化・DXには壁があるという前提があります。
自治体におけるkintoneの広がり
前提として、kintoneは開発の知識がない方でも簡単に業務システムの作成ができるクラウド型業務アプリ開発プラットフォームです。ノーコードツール、ノーコードプラットフォームという括りの製品として活用されております。
直近では、自治体でもkintoneのようなノーコードツールが使いやすいとご評価いただくことが多くなってきております。
従来のシステムは作ってもらうものという前提から、業務のプロである原課職員がシステムを作成して業務改善をしていくといったスタンスが自治体でも広まってきました。
それを可能にするツールの代表格としてkintoneが評価されている状況です。特に、ここ数年で大きく導入数を伸ばしており、2023年には250を超える自治体に導入されています。
ここ数年の動きとして、2019年にLGWAN内でkintoneが使えるようになったことが1つの契機となりまして、2020年〜2022年あたりのコロナ禍でさらに活用が広がったと思います。
給付金の管理やワクチン接種の予約などの市場で迅速にシステムを構築することが求められて、kintoneを使ったシステムでそれを改善していく自治体が数多く現れました。
33都道府県がkintoneを活用
都道府県庁では特にkintoneの活用が広がっておりまして、現状47都道府県中33都道府県にkintoneをご活用いただいております。
サイボウズとしても大阪府と事業連携協定を締結したり、埼玉県では生成AIとkintoneの連携なども進めているため、こういったところも1つトピックになるかと思います。
自治体におけるkintoneの活用領域
自治体におけるkintoneの活用領域は非常に多岐に渡ります。
オンライン申請を推進する取り組みとして対市民の業務で活用したり、役所の内部事務の効率化という観点で部署間の情報共有に使ったりなどさまざまです。
また、被災現場や工事現場など現場とのやり取りといった側面でもkintoneをご活用いただくケースがあります。
上記の画像は一例になりますが、自治体は部門が多岐に分かれておりまして、そのなかで特有のシステムも多くあります。
自治体専用のコミュニティでは「こんなことに使えますよ」といったやり取りが日々されており、毎日さまざまな部署でkintoneの活用事例が生まれている状況です。
kintoneと「シェアDX」
サイボウズでは、成功したシステムやノウハウを自治体間でシェアしていく発想のことを「シェアDX」と銘打っております。
現在、kintoneと「シェアDX」といった形で、自治体間で成功した取り組みを共有してノウハウを伝えていこうといった機運が生まれてきている状況です。
行政デジタル化の大きな壁の1つとして、「成功している自治体が何をしているのか分からない」といった声をお聞きします。
そのなかで、行政の特徴として主に以下の2つが挙げられます。
- 非営利で運営されている
- 規模や地域が違っても、業務の内容は似通っている
kintoneには、作成したアプリをテンプレート化して他のkintoneにコピーできるという特性があるため、1つの自治体でうまくいった成功例をシェアしやすくなっています。
自治体の職員の方々もそういった動きに積極的な方が多いため、1つの自治体で作ったシステムをベースに他の自治体が最小限のカスタマイズで導入する流れが生まれました。
これは、自治体が持つ特徴とkintoneの仕組みがうまくマッチした取り組みだと思います。
自治体kintoneコミュニティ「ガブキン」
サイボウズでは、自治体間の情報共有を活性化させる仕組みとして自治体コミュニティ「ガブキン」を立ち上げました。
ガブキンでは、kintoneアプリをシェアできる機能のほか、kintoneを学べる専用スペースや自治体間のコミュニケーションスペースなどをご用意しています。
現状650団体、2,900名以上が参加する大規模なコミュニティに育ってきておりますので、行政職員の方はぜひご参加ください。
業務改善基盤としてのkintone活用
昨今、業務改善基盤としてのkintoneの活用が自治体でも広まってきております。
元々、特定の部署や業務において単一の用途でkintoneを活用するケースが多かったのですが、より広い用途で活用していこうという機運が生まれてきました。
住民向けのオンライン申請の基盤や見える化するためのツールとしての活用など、1つのkintone環境を全庁的な基盤とすることでDXを推進していく動きが徐々に出てきています。
自治体DXの現在地とサイボウズの取り組み
コロナ禍を超えて、自治体におけるDXを進めていかなければいけないという感覚は、より育ってきていると思います。
一方、デジタル人材の人手不足や制度の整備遅れなどが目立ち、なかなか進められないといったお問い合わせが増えてきている現状です。
そこで、サイボウズとしてここ数年力を入れて取り組んでいるのが、自治体向けにkintoneを1年間無料で提供するというキャンペーンです。
自治体の予算の枠組み上、すぐにkintoneを大きな規模で予算化することは難しいため、1年間を実証期間に充てて、その間に全庁的に活用できる土壌を整えていただきます。
そして、翌年度から本格導入していくといった動きを推進するための取り組みという背景もありますし、自治体がトライアルしやすい環境を整えるという意味でも行っております。
こちらのキャンペーンは2024年度で3年目になるのですが、過去2年間で100自治体以上にご参加いただき、さまざまな効果が生まれている状況です。
また、ただライセンスをお渡しするだけでなくサイボウズとしてもかなり力を入れてフォローを行っております。
業務の棚下ろしからkintoneの習熟、アプリの作成や業務での効果測定など、BPRフェーズから実証フェーズまで一気通貫で支援を行っています。
私の所属する公共グループからも担当者が付き、随時フォローを行う体制を整えています。
キャンペーン参加自治体の事例紹介
自治体での活用を推進するなかで、実際に自治体でも成果が生まれ始めておりますので、2つ事例をご紹介させていただきます。
事例1.裾野市「おくやみ窓口システム」
1つ目の事例は、静岡県裾野市での事例です。
1年間無料キャンペーンを通して、トヨクモ製品をセットでご活用いただき、より大きな成果を生む事例が目立ってきておりまして、その代表例になります。
裾野市では、キャンペーン期間中に「おくやみ窓口システム」を構築し、市民の方が亡くなったときに手続きをするためのフローをシステム化されました。
通常であればシステムの導入は一定のコストがかかり検証から始めていきますが、裾野市は無料キャンペーンの期間中に検証・構築から市民向けの運用までを実現されました。
システム構築にあたっては、DX担当部門と原課の方が二人三脚で、役所内で対面開発で構築されて、トライアンドエラーを繰り返してシステムの内製化を行いました。
kintone単独の仕組みではなく、予約の受付にFormBridge、予約状況の表示にkViewerを活用されています。
内部事務の効率化だけではなく、対市民業務の効率化にも効果を及ぼした非常に特異な事例になったのではないでしょうか。
事例2.大阪市「kintoneずかん」
2つ目の事例は、昨年キャンペーンにご参加いただいた大阪市での事例になります。
大阪市では全庁的にkintoneの活用を広められているのですが、そのなかで1つ面白い取り組みとして大阪市版の「kintoneずかん」を作成されました。
「kintoneずかん」とは、先ほどご紹介した自治体コミュニティ「ガブキン」でサイボウズが各自治体のアプリを紹介するために使っているツールの名称です。大阪市では、これを独自に自治体様式で作られました。
大阪市版の「kintoneずかん」を職員の方が参照することで、他の部署がどのような形でkintoneを使っているのか視覚的に分かりやすくなり、興味を喚起できます。
また、利用が進まない部署に対してはDX推進部門からアプローチしているとのことで、部門を訪問してのデモの実施や構築支援ができる職員の派遣などを行っているようです。
最後に
本日は、kintoneの自治体での展開および最新の導入事例をご紹介させていただきました。
kintoneに加えて、トヨクモのサービスも活用して、よりkintoneが自治体で盛り上がっている状況になっておりますので、今後もぜひkintoneをよろしくお願いいたします。
私からは以上です。本日はありがとうございました。