トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。
2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。
今回は、エン・ジャパン株式会社 DX推進グループ グループマネージャー 高橋淳也氏に語っていただきました。
自己紹介
エン・ジャパンの高橋です。DX推進グループのグループマネージャーを務めております。エン転職やエンゲージなどの採用サービスの裏側にいる企画職の1人として、事業部内の(現場側の)業務改善やDXを進めております。
キャリアとしては、2006年にエン・ジャパンに新卒で入社し、10年間、求人広告のコピーライターをしておりました。2016年、会社が変革期に入り「5年で売上を4倍にする」成長戦略が描かれ、エンジニアは多忙を極めました。それでも現場はいろいろ改善する必要があるといった状況になりました。
「それならノーコードだ!」ということで、社内でのノーコードの活用と推進をしてきたものでございます。こういった活動をご評価いただいて日本DX大賞「人と組織部門」や日本ノーコード大賞など、合計3部門で受賞しております。
私のX(旧Twitter)では、毎日いろんな情報を発信しておりますので、ご興味ある方はぜひフォローしてください。
会社概要
エン・ジャパンは2000年設立、売上高677億円、社員数3,380名の会社です。エン転職やAMBI、エンゲージなどの採用サービスの広告を出させていただいておりますが、採用だけの会社ではありません。
1985年、前身の会社の時代から人材教育・評価事業を立ち上げておりまして、1987年にはオリジナルの適性テストを自社で開発し、現在も運用中です。
採用だけではなく、教育と評価のノウハウがあるため、社内でのDX人材育成もちゃんと進んでいる会社となっています。そして、創業40年、真面目にHRを追求してきたエン・ジャパンでは、DXツールとしてkintoneをフル活用しております。
エン・ジャパンのkintone/関連サービス活用歴
2017年当時、私はコピーライターだったため、制作部門でkintoneとトヨクモのFormBridgeを使い始めました。
2018年にはトヨクモの他製品も利用するようになり、だんだんkintoneの中で(ログインして)使う形になっていきました。2020年にはkrewシリーズも導入しました。
2022年になると制作部門だけでなく、営業部門や代理店でもkintoneを活用するようになり、gusuku Customineを導入してどんどん利用が拡大していきました。
注目していただきたいポイントとして、2024年現在、私の部署では1,400ライセンスを運用しておりまして、累計kintoneアプリ数は5,958個となっています。以前、トヨクモ社のイベントに出させていただいた時は4,900個だったので、すくすくと育っている状況です。
ちゃんとアプリの棚卸しをして常時1,000個程に収まるようにしています。「作っては捨て」「作っては捨て」を繰り返して、改良し続けております。
DXツール導入時の葛藤
お話ししたようにエン・ジャパンではいろいろなサービスを導入しているのですが、そこで本日のテーマになるのが、ツール導入時の葛藤です。
ツールの導入・検討時、以下のようなお悩みはよくあることかと思います。
- 初めてのツール導入で何から始めていいのかわからない
- 失敗したくない/失敗してはいけないのではないか
- 自社の状況や課題とぴったりフィットする事例がない
- 状況的に絶対に成功できると言えず、上司を説得できなくて困っている
ここでの問いとして皆さんと一緒に考えていきたいのは、「失敗せずに導入できるのか」、そして「本当にしてはいけない失敗は何か」ということです。
この点について、エン・ジャパンでの実例を踏まえてご紹介できればと思います。
エンジャパンにおけるツール導入時の葛藤
先ほど、kintoneをがっつり活用していますとご説明しました。ただ、これは今の話であって、2017年当時は先が見えなかったので、導入時はかなり葛藤したのを覚えています。
当時の状況は、事業部側としては営業部門、制作部門の業務改善・DXを進めたい一方、情シスは基幹システムのリプレイスなどで手一杯な状態でした。
kintoneや関連サービスのトヨクモ製品などをたくさん調べたのですが、当時は「なんかできそうな気がする」といった状態でした。気になるので、仕事が終わってからもWeb検索して、土日もつい調べてしまっていたのですが、やはり確証が持てずにいました。
導入事例を見ても「この会社とは状況違うしな」「事業も規模も違うしな」といった感じで、この状況が本当に嫌でした。
白黒をつけるための検証
当時、上司と話したのが「この膠着状態から抜け出そう」ということです。そのため、私たちエン・ジャパンがツール検証する時は、”白黒をつけること”を大事にしています。
「kintoneやトヨクモ製品を使ってできるかも?」という淡い期待から脱出するために本気で検証する、白黒をつける。無理ならエンジニアサイドに踏み込む。kintoneやトヨクモ製品を入れる時、それくらいの覚悟を持ちました。
一番嫌なのは、ツール導入の判断が遅れることによって事業側がやりたいことが実現できなくなり、売上があがらないことやチャンスロスすることです。それこそが、会社としての本当の失敗なので、しっかり白黒をつけようと取り組みました。
白黒をつけるためのポイント
現場社員もkintoneやトヨクモ製品を使って改善できたのであれば、「これはDXツールでいける」「社員を育成しよう」という方向でいく。
ダメなら「テーマ的にこれはノーコードでは限界なんだ、無理なんだ」と判断してエンジニアを採用するか、本職のSIerにお願いするという道になる。
この白黒をつけるために、大事だと思ったポイントが「自分たちで確かめる」、「実際に操作する」、「検証時間を確保する」の3点になります。
検証手法は無料トライアル
検証手法としては、ちゃんと無料トライアルに申し込むことにしました。以前までは、いろんなツールを触らずに検証していたのです。
最初の頃は、インターネットで情報収集をして、類似製品との比較表を作って、事例などからできることを類推していました。しかし、推測に基づいて社内稟議を作るとやっぱり弱いので、確証を持った説明や回答ができない。社内で起案を押し通せませんでした。
また、不明確であるが故に、結果すごい時間がかかっていると思ったのです。例えば、調査時間に5時間かかったとして正社員の時給が3,000円なら15,000円の人件費がかかっていることになります。
ツールを触って得た気付き
一方、触って検証すれば予想通りに動作するものとしないものが、ちゃんと白黒つきます。予想通りでないものには期待以下のものもあれば、「これできるんだ、こんな簡単なんだ」といった期待以上のものもありました。
これは調べてるだけでは分からなかったことで、やっぱり触ったからこそ分かる部分だと思っています。この実体験に基づいて社内稟議を作ることで説得力が上がり、さらにデモ画面を見せられるので、より説得力が増します。
そして、実際に製品を触った方がちゃんと検証できるので、結果的に早かったのです。単純計算になりますが、感覚としては2時間ぐらいで終わって、6,000円の人件費で検証できたみたいなイメージです。
振り返るとモヤモヤと悩んでる時間ですごいロスをしていたと思います。なので、「百聞は一見にしかず」と言うように、実際にトライアルした方が早く確実に検証できると考えています。
実現したいことをリストアップする
検証する時に、やりたいことをリストアップするようにしました。解決したいことに対してダメだったらまたツール探しといったことはやりたくなかったんですね。
解決したいことをリストアップして、どれならできる、これはできないを判断すると一網打尽でいけます。実は、kintoneやトヨクモのkViewer導入時、エン・ジャパンでは以下のような状況でした。
kViewer……社外関係者への情報共有のためにスモールスタート
kintoneは、元々の導入目的にマッチせず外れていたのですが、調べてトライアルしていく中で、別の課題にすごくフィットすることが分かって導入を決めました。
kViewerについても、最初はスモールスタートで社外関係者への情報共有を目的に始めました。やりたいことをリストアップした後、「ナレッジサイトでも使えるかも!」となり活用が進んでいきました。
そのため、しっかりやりたいことをリストアップすれば、迅速かつ漏れなく検証できると思います。
事例は部分的に見ることを意識
ツールの検討時、事例をたくさん見たのですが、私たちは部分的に見るようにしていました。
業界、規模、部署、課題、推進体制、組織風土、デバイスなど、すべてが全く同じ会社はありません。それなら事例は使えないのかというと、そんなことはなくちゃんと使えます。
例えば、事例Aは業界・規模・課題・デバイスが一緒だとか、事例Bは推進体制は真似できそう、事例Cは組織風土が参考になるみたいな感じで見ていきました。
複数の事例をパッチワーク的に組み合わせて、できそうなこと、できなさそうなことの予想を立てることで検証の準備をしていきました。
無料トライアルの期間を把握しておく
実現したいことをリストアップしたり、事例を見たりしていろいろ準備していくと、30日間の無料トライアルで100%検証できるのか、ものすごく不安になりました。
そこで、お試し期間を延長できるのか聞いてみたのです。「原則延長はしておりません」ということだったので、複数回できるのか聞いたら「設定はリセットされるけど、それでもよければいいですよ」とのことでした。それならということで、思いっきり検証させていただきました。
ここがポイントだと思っていて、やはり検証したいことを洗い出していくと期間が足りなくなるケースが出てきます。ギリギリになってから迷わないためにも、トライアルを始める前に期間・回数をちゃんと把握しておくと安心して検証に挑めると考えております。
ツール導入の流れ
ツール導入の流れについてです。
まずは、事業としてやりたいこと、解決したいことを洗い出しておいて、ツールを探しに行きましょう。
ツールを検証していけるとなればスモールスタートする。ダメだと判断した時も「ツール探索をする」、「ノーコードでは無理だから本職のエンジニアに頼む」などの白黒がつくので、失敗ではありません。
また、スモールスタートしたものについては「このまま利用を拡大しようか」とか、「プランアップしようか」といった検証がずっと続いていくので、実は検証には終わりがないのかなと感じております。
ツール導入は新規事業と同じスタンスが大事
振り返ると、このツール導入の流れは、新規事業と同じスタンスが大事だと思うのです。会社の存続を考えると、既存事業だけずっとやっていても落ちてくるので、どの会社も新たな事業が必要になります。
新規事業は「千三つ」と言われるのですが、これは1,000個やって3つ当たればOKぐらいの確率論です。つまり、多少のロスが出ても新規事業の検証を会社としてやる必要があり、そこには許容されるラインがあるわけです。
この路線はダメだと分かったのであれば、それは失敗じゃなくて発見になります。その道が消えたから、他の道をやるしかないということが分かるからです。この点、ツール検証でも一緒だと思っています。
ツール検証を標準化
私たちエン・ジャパンでは、ツール検証をちゃんと標準化しております。
まず、目的を明確にする。事業として、業務として何を実現したいのか整理するために事例を調べて、複数事例から参考になる部分をピックアップしています。
次に、課題をリストアップして、やるのであれば一気に検証します。トライアルの計画を立てる時、期間は伸ばせるか、何回チャレンジできるのか正しく把握して計画を組むことが大切です。
そして、トライアルを実施して白黒をつけます。使えないことが分かれば、合わなかったことが発見できたということになります。検証結果を踏まえて、プロジェクトを前進させるのです。
ツール検証には終わりがない
実際、エン・ジャパンではkintoneを導入してから、たくさんの無料プラグインや有償プラグイン 、関連サービスを使ってきています。
その中で、有償プラグインのプランを上げるか、下げるかなどをずっと考えていますし、新規プラグインの契約に伴って他サービスを利用停止して統合することもあります。つまり、ツール検証って終わりがないんです。
だからこそ、エン・ジャパンではこのプロセスをちゃんと標準化しています。業務改善・DX推進については検証がずっと続くので、ちゃんと型化をしております。以上が、お伝えしたい内容です。
まとめ
それでは、まとめに入ります。冒頭ご説明した「本当の失敗とは何か?」、「許容できる失敗範囲は?」、ここが本日一番強調したかったことです。
やはり、ツールを選定する時に成功するトライアルは無理だと思っています。「白黒をつける」、「失敗ではなく発見」と気持ちを整理してあげないと、やっぱりメンタルに来てしまうのです。
だからこそ、本日お話ししたような捉え方をしませんかということで、私たちエン・ジャパンでの事例を踏まえてご説明いたしました。
エン・ジャパン[DXリスキリング]
最後に、ツール導入には専門性や慣れが必要だとも思っていますので、もし慣れないうちはプロに頼むのも有効だと思います。当社では、エン・ジャパン[DXリスキリング]という形で、そのご支援をしておりまして、これまで培ってきたノウハウを外販しております。
例えば、kintoneの導入と社内推進をどうするか、トヨクモ製品の導入と利活用、そもそもDXをどう進めていくか、などです。利用拡大のための作業手順書、リリースチェック、ガバナンスの作成など、私たちは全て通ってきました。
事業会社として実践してきたものをそのままお届けすることで、皆さんが遠回りせずに最速で成果が出せるサービスを提供しておりますので、ご興味ある方はぜひお声がけいただければと思います。本日はありがとうございました。