【神戸市】現場の職員がアプリを作成!市民開発型のkintone活用法

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」は、25以上のkintone+トヨクモ製品の活用例を大公開する年に一度のオンライン+リアルイベントです。

2024年のテーマは「きっと、もっと好きになる、kintone」で、さまざまな業界で活躍中のユーザーからkintone+トヨクモ製品の便利な使い方をご紹介いただきました。

今回は、神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 宇都宮哲平氏に語っていただきました。

自己紹介

皆さん、こんにちは。神戸市役所の宇都宮と申します。本日は、神戸市のkintone活用事例についてお話しさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

簡単な自己紹介です。私は、神戸市の企画調整局 デジタル戦略部に所属しています。2020年に入庁いたしまして、今年で5年目になりました。

kintone認定アプリデザインスペシャリストやITコーディネーターの資格を所有しておりまして、外部から来たデジタル化専門官という立場でやらせていただいています。

メインとしてはkintoneの管理者を担当しておりまして、2022年度からはドローンの庁内活用なども行っている状況です。

神戸市の紹介

神戸市は、兵庫県にある政令指定都市で9つの行政区から成り立ちます。

2023年10月のデータでは、人口150万人弱(政令市7位)、面積は557.02㎢(政令市9位)の規模となっています。

神戸市は海と山がとても近く、六甲山で登山をすると非常に楽しい風光明媚なところです。

神戸市のkintone環境

はじめに、神戸市のkintone環境についてご説明いたします。

神戸市では2018年にインターネット版のkintoneを導入し、2020年にはLGWAN版(総合行政ネットワーク)も始めました。

私が入った2020年当時は、約50ユーザーほどでの運用だったのですが、どんどん増えていき現在は2,000ユーザーほどに拡大しています。本運用申請が終わっているアプリもおおよそ1,000個ほどある状況です。

これまでこの2環境で進めていたのですが、2024年4月より全庁版という第3の環境をスタートしました。IPアドレス制限をかけてインターネット上のkintoneを使うものになりまして、4月現在で13,000人の全職員がユーザーとして登録しています。

今後は、どんどんこの新環境を活用していこうとしていまして、古い2つの環境は縮小していく予定で進めています。

「内製化」ではなく「市民開発」

今回、神戸市では「内製化」ではなく「市民開発」という言い方をさせていただきます。

ここ数年、kintone界隈では市民開発という言葉が使われています。どういうことかと申しますと、まず私たちデジタル戦略部のような情シス部門がアプリを作ることを内製化と言います。

一方、市民開発というのは、全庁の職員が自ら現場で役立つアプリを作る、そういった開発の仕方を市民開発型のように言いまして、神戸市はこのやり方で進めてきています。

ということで、本日は市民開発型で職員自ら作ってきた、いろんなアプリの事例をいくつかご紹介できればと思います。

神戸市の外部連携サービス利用状況

神戸市では、トヨクモ製品やCustomine、カンタンマップなど複数の外部連携サービス・プラグインを使用しています。

現在利用中のトヨクモ製品は、以下の5つです。

  • FormBridge:kintoneに接続できる高度なWebフォーム作成サービス
  • kViewer:kintone内の情報を外部公開できるサービス
  • PrintCreator:kintoneと連携できる帳票出力ツール
  • kMailer:kintoneに連携するメール送信システム
  • kBackup:kintoneアプリのデータ保全をするためのサービス

この中でも、FormBridge、kViewer、PrintCreatorの3製品が一番使われています。

FormBridgeの活用パターン

2021年当時、新型コロナ関連の事例を調べるとすべての事例においてFormBridgeが使われていました。

そこでFormBridgeの使い方をいくつかのパターンに分けられると思いまして、実際に分けてみた結果が以下の3パターンです。

  1. 市民→担当者→FormBridge
  2. 市民・事業者→FormBridge
  3. 職員→FormBridge

1つ目は、市民の方から電話を受けて、その内容を担当者がFormBridgeに登録するパターン。

2つ目は、市民や事業者の方からのアンケートや事業報告結果をそのままFormBridgeに入力していただくパターン。

3つ目は、職員自身が庁内での照会や報告などのために回答するパターンです。

このように3つぐらいのパターンに分かれて、神戸市のいろんなところでFormBridgeを使った事例が生まれています。

FormBridge×kViewerの活用事例

こちらは、FormBridgeとkViewerを組み合わせたコロナ関連の事例になります。

ワクチン接種予約のお助けをする各区のボランティア隊の受付状況を表示するビューをkViewerで作成し、神戸市のホームページにそのまま埋め込んでいます。

現場の職員がFormBridgeを通して、各区のボランティア隊の空き状況≒混み具合を更新し、それがリアルタイムにkViewerに反映されるという仕組みです。

kViewerをポータルサイトとして利用

次に、kViewerをポータルサイトとして利用した事例になります。

神戸市のWebサイトにあるポータルサイトへのリンクをクリックすると、kViewerのページが開きます。

kViewerのページがそのままポータルサイトのように使えている、また普通にWebサイトの一部のようなイメージで利用できている面白い事例だと思っています。

なお、こちらに関してはkViewer1製品だけで実現可能です。

トヨクモ3製品を組み合わせた事例

こちらは公用車運転日報というアプリです。2019年に西部建設事務所の藤原さんという若手職員が作ったアプリになります。

こちらのアプリ導入前は、運転日報を紙で管理していたため、段ボール1箱分の日報が1年で貯まってしまうような状況でした。

導入後は、FormBridgeでデータ入力、kViewerで情報共有および自動転記、PrintCreatorで帳票化することで年間5,000枚ほどのペーパーレス化を実現しました。

日報の取りまとめや走行距離の集計など、いろんな作業も減らせたため、紙の削減だけでなく業務効率化にもつながっています。

建設事務所から全庁にまで横展開

2021年には、ある副所長の方がこのシステムを西部建設事務所だけでなく、全部の建設事務所に広めたことで年間3万枚、押印30万回が削減されました。

さらには、これを全庁に横展開したところ、現在は全30アプリが稼働し、総数22万件ほどのレコードが登録されている状態にまで発展しました。

こちらを推計すると紙で言えば22万枚、ハンコを押した回数で言えば1枚あたり8回押印すると仮定して176万回も押印作業を削減できている計算になります。

金額にすると、恐らく1,000万円〜2,000万円ぐらいのコスト削減になっているのではないでしょうか。

さらに、現場ではETCの使用簿を作ろうとか、アルコールチェックもしようといった動きがあり、職員が独自にアプリを作成することで、より効率化する事例が生まれています。

kintone×トヨクモ製品で震災支援を実施

神戸市では石川県北東部、能登半島の先端に位置する珠洲市の支援をしておりまして、私も道路状況の収集・共有システムの作成という形で関わらせていただきました。

従来は職員が現場で写真を撮り、PCに取り込みExcelに地図と一緒に貼り付け、場所をプロットして、事業者に修理依頼を出してと非常に煩雑で大変な作業となっていました。

そこで神戸市として一週間ほどで作成したものが、こちらの「道路状況収集・共有アプリ」です。

スマートフォンでFormBridgeを開くと現場の地図が開きます。緯度・経度が分かるため、現場の写真と合わせてフォームから報告することで、kintoneにどんどん道路状況の情報が貯まっていきます。

その後、MyページURLをLINE経由で建設業協会に共有することで、同協会が各事業者に仕事を割り振っていくという仕組みです。なお、PrintCreator連携により、データを作業依頼書PDFとして出力することも可能です。

なお、FormBridgeをカスタマイズして、地図表示と現在の緯度・経度を取得するJavaScriptを私の方で開発して、GitHubで公開しておりますので、もしよければお試しください。

※JavaScript/CSSでのカスタマイズはトヨクモのサポート対象外となります

今後の展望

最後に今後の展望についてお話しさせていただきます。

「仮想待合室」に慣れる

まずは、去年トヨクモクラウドコネクトが始められた際に契約した「仮想待合室」に慣れておくことです。

去年、1度だけですが神戸市で小学生向けのアンケートをFormBridgeで実施した際、朝の会で回答が集中して「同時アクセス数上限を超えています」という状態になりました。

仮想待合室があればそういった際に、混雑状況と待ち時間の目安が表示されるため、見る方にもワンクッション置くことができます。

今後、そういった事例はそんなにないとは思うのですが、新型コロナ規模の何かが起きた際には、必ず役に立つ機能ですので、kintoneを扱う全職員が慣れて知っておくことは必要だと思っています。

現場のアイデア・事例を共有する

もう1つは、現場のアイデア・事例を共有して、現場主導の業務改革を進めることです。

FormBridge、kViewer、PrintCreatorの3製品連携はすごく使いやすく便利な機能だと思っていて、本当に無限大のアイデアが存在すると考えています。

実際、建設局の若手職員が、講習会の申込〜確認テスト合格後の修了証発行までを全自動化したのですが、「これは面白い」「すごい」と話題になりました。

こういった素晴らしい事例は、これからもどんどん出てくると思います。私はこのような現場の事例を分かりやすく一般化して、13,000人いる職員に共有していこうと考えています。

共有した結果、現場で「ならこんなふうにも使えるね」とアイデアが出てきて、新しい事例がどんどん生まれる、好循環が生み出せればと思っております。

私からの発表は以上です。どうもありがとうございました。