【新潟市】アナログな報告業務をデジタル化!三方良しの業務改革を実現

トヨクモが主催する「トヨクモ kintone フェス 2024」のリアルイベントで開催されたコンテスト「トヨクモALIVE」のセッションをご紹介します。

今回は、新潟市デジタル行政推進課 菊地真吾氏にご登壇いただきました。

はじめに

新潟市デジタル行政推進課の菊地と申します。本日はよろしくお願いします。

今回は、「三方良し、誰もが生き生き仕事ができるようになった話」といったテーマでkintone・FormBridgePrintCreatorを活用した事例をお話しさせていただきます。

保育施設の事故報告業務とは

まずは、民間の方にはなかなかイメージしにくいと思いますので、保育施設の事故報告業務の具体的な内容についてご説明いたします。

保育園児が園内外で通院を伴う大きなケガをした場合、保育士等が市の担当課に報告します。そのあと、報告を受けた担当課が事故として集計を行うというものが保育施設の事故報告業務です。

なお、2023年度の新潟市では、保育施設が約320園、園児が約24,400人、保育補助職含む保育士等が約7,070人いました。その中で、事故件数としては年間約1,615件となりました。

デジタル化前のワークフロー

それでは、デジタル化前にどのような形で事故報告業務をしていたのかご説明いたします。

登場人物は、大きく分けて保育士等、区・指導保育士、幼保支援課の3人です。

はじめに、ケガが発生したら保育士等がWordや手書きで報告書を作成し、指導保育士にFAXまたはメールで送信します。なお、新潟市では8つ区があり、合計10人(一部の区が2名体制)の指導保育士がおります。

指導保育士が内容を確認し、記入不備や分かりにくい文章があった場合は、確認・再作成依頼などを行います。入力・整理が完了したら、指導保育士が紙をスキャンして幼保支援課という担当課に共有します。

最後に、報告書の共有を受けた幼保支援課が集計を行うというのがデジタル化前の一連の流れでした。

抱えていた問題点

各部署でやっていた大変だったことをまとめてご説明します。

まず、保育士等に関してはWord、手書きでの報告書の作成に手間がかかっており、入力の不備も発生していました。

また、報告書の送信に際して、印刷・FAX・メールの手間があったことに加えて、紙で印刷していたため、紙の保管や廃棄のコスト、紛失リスクなども抱えていました。

指導保育士に関しても同じくFAX・メールの確認の手間、紙の保管・廃棄のコストがありました。さらに、報告されたものをわざわざExcelに入力しており、その過程で不備が発生していました。

幼保支援課に関しては、8区分すべてのExcelを統合するという手間があり、なおかつ紙で印刷されたものに関しては画線法で集計する必要があったため、ミスが発生していました。

以上をまとめると、デジタル化前の状況は以下のようになります。

  • 報告書をWordまたは手書きで作成し、FAXまたはメールで提出していた
  • 報告書の入力不備により確認と再作成が3割程度発生していた
  • 報告内容をExcelに入力、報告書をスキャンしてメールで共有していた
  • 報告内容のExcelを統合、該当件数を画線法で集計していた

kintone・トヨクモ製品導入後のワークフロー

こちらが、kintoneおよびトヨクモ製品を導入して改善したあとのイメージになります。

今回、園児の事故報告用のkintoneアプリを作成しました。

まず、ケガが発生したら保育士等がFormBridgeで作成したフォームに入力します。このタイミングでPrintCreatorから受付番号入りのPDFの帳票を出力します。

次に、指導保育士はこれまでメールやFAXで報告書を確認していましたが、kintoneの通知で気付けるようになりました。

確認が必要なときは、帳票に入っている受付番号を共通言語とすることでスムーズにやり取りができます。必要事項に関しては、kintoneのレコードに直接入力をしていけば完了です。

幼保支援課の業務については、kintoneからの通知を受け取り、内容の確認およびCSV出力をしたあと、集計および分析を行っていくという形になりました。

以上をまとめると、kintone・トヨクモ製品導入後は以下のように改善されました。

  • 報告書をWebフォーム化してFAXやメールのやり取りを省略
  • 報告書をWebフォーム化することで大幅に入力不備を削減
  • kintone・トヨクモ製品の導入で報告内容が共有可能に
  • CSV出力を利用することで集計が楽に

定量的な改善効果としては、年間約120〜160時間の削減を達成いたしました。

フォーム・帳票画面の紹介

実際のフォーム・帳票のキャプチャをお見せしてご説明させていただきます。

前提として、どちらもノーコードでカスタマイズは一切しておりませんので、非常にシンプルなものになっています。

フォーム画面

こちらがフォーム画面のキャプチャになります。

まずは、必須事項を設けました。これまでは、紙やWordで入力していたため、どうしても入力不備が出ていたのですが、必須にすることでそういった不備もなくなりました。

また、「発生時の詳細」という項目の入力欄の下に例文を入れたのもポイントです。これまでは人によって文章の分かりやすさに差がありましたが、例文を入れたことである程度統一されるようになりました。

次に、こちらのキャプチャをご覧ください。

顔面という項目を選択した場合、顔面に関するチェック項目が出現するようになっています。
FormBridgeの条件分岐を使用してチェックに応じた項目を出すようにしたことで、これまで発生していた入力不備がなくなりました。

帳票画面

こちらは帳票画面のキャプチャになります。

先ほどのフォームに入力した内容がそのまま帳票として出力されています。

右上に受付番号を入れることによって、受付番号を共通言語として話ができるようになっているのがポイントです。

担当職員の声

こちらが一番伝えたいメッセージでもあるのですが、改善後の担当職員の声をお伝えさせていただきます。

  • Aさん「FAXやメール、電話、Excel集計などの業務が効率化し、関係する職員みんなが楽になりました!」
  • Bさん「園児のケガが減るように、より一層分析や対策に力を入れていきたいですね!」

これまで園児のケガを集計するだけで精一杯という状況でしたが、今後は園児のケガが減るための分析や対策、いわゆるコア業務に集中していきたいということでした。

まとめ

今回、三方良しということでお話しさせていただきましたが、まとめると以下のようになります。

  • 担当職員:業務効率化、コア業務への注力が可能に(事故の分析や対策)
  • 保護者:安心感が生まれた、子どもが安全に成長してくれて嬉しい
  • 伴走担当者:やりがい、子どもが笑顔で過ごせて何より

今回のデジタル化を通して、まさに三方良しが実現できたのではないかと思っております。

本日お話しした内容は、新潟市デジタル行政推進課のnoteでもご紹介しているので、ご興味あればぜひご覧ください。

新潟市の紹介

最後に、新潟市の紹介をさせていただきます。簡単に言えば、新潟市は「近い、美味い、気持ちいい」ところです。

まず、「近い」ですが、東京駅から新潟駅まで上越新幹線を使って最短89分で行けます。4月に新潟駅が新しくなりまして、すごい勢いのある街だと実感しております。

次に「美味い」については、皆さん新潟と聞くと、米や日本酒のイメージがあると思います。もちろん、それも美味しいのですが、新潟は肉・野菜・魚のすべてが美味いです。

最後に「気持ちいい」になりますが、新潟は都心であっても自然が豊かで、車で10〜15分行けば自然豊かな遊び場にも行けます。

東京駅始発が6時8分に出ていて、新潟駅発の終電が21時40分と、丸1日遊べるところになっておりますので、ぜひ皆さんお越しください。

本日はありがとうございました。

質疑応答

司会:三方良しということで、事故の原因の分析・対策というコア業務に時間を割けるようになったという点が特に素敵だなと思いました。

1点伺いたいのですが、紙でやられていた業務をWebフォームに変えられたということで、実際に業務される皆さんからの抵抗などはなかったのでしょうか?

菊地:意外とそういった声はありませんでした。保育士に若い方が多いため、あまり抵抗がなかったのと、若い方がベテランの方へのフォローもしてくれたので問題なくご利用いただけのだと思います。

今井:同じくデジタル行政推進課の今井です。今の補足になりますが、いきなり運用を始めたわけではありません。

最初にレビューのタイムを一定程度設けて、その間に「もっとこうして欲しい」という声への対応をかなり丁寧にやりました。それが、現場に入っていきやすかった理由だと考えています。

司会:この度は、ご登壇いただきありがとうございました!