行政×トヨクモで広がる可能性!コロナ禍の業務ひっ迫を救ったシステムとは

「私とトヨクモとの出会い」のシリーズは、トヨクモ製品を活用している企業の「製品を知ったきっかけ」や「導入の決め手」、「社内に普及させるための取り組み」を紹介する企画です。

この記事では、福岡県後期高齢者医療広域連合 総務課 情報システム係長(北九州市から派遣中)の井上望さんにお話を伺いました。

井上さんは、1995年4月に北九州市役所に入職。介護保険制度施行時の介護認定審査会の立ち上げをはじめとした保健福祉に関する部署を経験されたのち、2020年以降は新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)が発生したことによる保健所の業務増大に対応するため、北九州市保健所の感染症医療対策課で従事されました。

新型コロナでひっ迫する保健所の業務、感染拡大防止と命を守るための仕組み作りに奔走された日々に、トヨクモ製品をどのように利用したのでしょうか?

福岡県後期高齢者医療広域連合 総務課 情報システム係長|井上望さん

セキュリティが厳重な行政だからこその悩み

地方自治体では、総務省が策定した「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に沿ってセキュリティ対策の方針を定めています。

対策方針のうち、ネットワークの構成に関わるのが「三層分離」という方式です。三層分離では、接続するネットワークを3つに分けることで、基幹業務をインターネットの脅威から守ります。

三層分離で用いられる接続系

  1. マイナンバー利用事務系:社会保障や税など住民情報を中心とした特に機密性の高い情報を扱うための閉域ネットワーク
  2. LGWAN接続系:人事給与や庶務事務、財務会計など高いセキュリティを必要とする情報を扱うための閉域ネットワーク
  3. インターネット接続系:ホームページ作成や情報公開などを行う際に接続する公開ネットワーク

この三層分離によって、自治体におけるセキュリティ強度は高まりますが、業務効率化の取り組みにはハードルとなることもあると、井上さんは語ります。

自治体では、市民の皆さんの生活に直結するものをはじめとした、重要な情報を扱っているため、強固なセキュリティ対策が求められます。北九州市の場合、個人情報を取り扱う業務に業務改善ツールを利用する場合、インターネットではなく、閉域ネットワークで運用する方針としています。そのため、閉域ネットワークに対応したSaaSを利用する場合、プラグインなどによる機能拡張の幅が限定されてしまうんですよね。

【kintone・トヨクモ製品との出会い】コロナ禍の業務負担を減らしたい

井上さんがkintoneと出会ったのは、新型コロナの陽性者が増加していた2021年のことです。元々は、保健福祉局の他の部署に従事されていましたが、2020年3月からは、北九州市保健所の感染症医療対策課で応援職員として従事、その後正式に異動辞令を受け、ひっ迫する保健所業務に奔走することとなりました。

井上さんが従事する部署で行っていた業務

  • 医療機関等から届く新型コロナの発生届を元に、陽性者から世帯状況・行動歴・体調などを電話で聞き取り、調査票を作成
  • 調査票の情報を元に療養方針を決定
  • 自宅療養者に対しての、電話による体調確認と健康観察結果の記録
  • 陽性者からの心配事や体調相談に対する、助言や受診・入院調整等の実施
  • 日毎の陽性者の数や感染経路の把握

これらの業務は陽性者全員に対して実施する必要があることから、陽性者の増加に伴って、業務量もどんどん増えていったと振り返ります。

新型コロナに対する疫学的な業務の内容は、国機関の実施要領により定められていることから、陽性者の増加に比例して業務が増えても、対象者や内容を限定するといった独自の取り扱いをすることは難しい状況でした。

当時、保健所では、陽性者情報を紙で管理していたんです。しかも、陽性者に関する業務は多岐にわたり、複数の部署に跨っているため、一冊しかない台帳をみんなで共有して業務を行わなければなりませんでした。

この管理方法だと、台帳が常にキャビネットにあるとは限りませんし、コピーをとったり独自に名簿を作っても、別の部署が感染者の方から聞き取った情報をリアルタイムに反映することができず、手間もかかるし、情報のズレにもすぐには気付けない非効率な管理になっていました。

それでも、第4波(2021年4~6月)までは、応援職員の手を借りながらも繁忙度合いは一定の枠内に収まっていたのですが、第5波(2021年7~9月)では、1日の陽性者数が200人を超え、紙台帳による管理が限界になってきたとのこと。

この様な状況のなか、井上さんは、ローコードツールであるkintoneと出会ったのだそうです。

実は、北九州市では2021年4月に、DXの司令塔としてデジタル市役所推進室(以下、「デジ室」)を設置。DX推進計画の策定に先立って、サイボウズ株式会社と全庁的なDX推進に関する連携協定を締結していたのです。

デジ室から全庁的にkintoneの活用についての照会が行われました。当時、ExcelやAccessによる管理に限界を感じていた自分は、「どう役立てられるかは分からないがkintoneを使ってみたい」と問い合わせてみたんです。時を同じくして、別の担当からも「kintoneで陽性者台帳を管理したい」とデジ室に要望しており、現場の中でパソコンやデータ管理に詳しい自分がアプリを内製することとなりました。

大きな組織では困りごとのキャッチアップが重要

陽性者の紙台帳をkintoneで管理すべく舵を切った北九州市ですが、最初は、井上さんは、トヨクモ製品の利用は検討していなかったそうです。

その後、デジ室の担当係長も参加し、定期的な業務改善の話し合いが行われるようになりました。更に、デジ室の配慮によりモバイル端末が優先的に配備され、内製したkintoneによる陽性者管理がスタート。でも実は、当時、自分としてはトヨクモ製品の利用は検討していなかったんです。

トヨクモ製品を使うとしたら「電子申請だ!」と思ったんですが、陽性者の方が誰でもパソコンやスマートフォンを使いこなせる訳じゃない。陽性者向けの電子申請と今までの電話受付を一緒にするのであれば、情報整理にかかる手間が増えてしまい、効率化につながらないと当時は考えていたんです。

その後も、新型コロナの波はとどまることを知らず、波が来るたびに陽性者の数は増え、ついには1日に1,000人の新たな陽性者が報告されるようになったとのこと。
1日に最大約100人の応援職員を投入しなければならない状況で職員も疲弊、「保健所の更なるDXが喫緊の課題である」と副市長から指示書が発出され、それによりデジ室と保健福祉局によるプロジェクトチームが立ち上げられて、組織の垣根を越えて集中的に業務の分析や部門間の情報共有、改善が行われるようになったとのことです。

このプロジェクトチームができたことにより、組織全体に業務改善の目的や方針が共有されたことから、様々なことがOODAループでスピーディーに改善されていくようになりました。

現場からも、具体的に建設的な提案が行われていったんですが、そのうち、トヨクモ製品に関係する部分は、なんと、まさに自分が敬遠してきた「陽性者向けの電子申請」に関する部分でした。

プロジェクトチームの一員の保健師さんから、「陽性者の一部の方だけでも電子申請してもらえれば、それだけ電話対応の負担が減るのでシステム化して欲しい」との提案があったんです。また、「陽性者の方だけが見ることができるお知らせページがあれば、電話で説明する時間を短縮できる」との相談があり、こちらは、kViewerで実現できそうでしたので、対応することにしました。

とはいえ、kintoneとトヨクモ製品でシステムを作りながらも、効果には懐疑的であった井上さん。ですが、実際には想像以上の効果をあげることにつながります。

トヨクモ製品の利用でkintoneの利便性アップに成功

北九州市では、kintoneの導入に併せ、閉域網でも使えるプラグインをいくつか導入しており、保健所ではすぐに利用することができて助かったと井上さんは振り返ります。

北九州市役所が導入しているトヨクモ製品

  • FormBridge:kintoneアカウントがない人も登録できるWebフォームサービス
  • kViewer:kintoneの情報をアカウントがない人にも共有できるサービス
  • kMailer:kintone内の情報を含めたメールを自動で作成・送信できるサービス

現場は陽性者の方への対応でひっ迫していたため、プラグインの導入のための協議や稟議を行う余裕はありませんでした。

デジ室が、トヨクモ製品をはじめとした、様々な部署で汎用的に使えるであろうプラグインを市の組織全体に導入してくれており、素早く対応することができたのは、本当に有難かったですね。

大きな組織や行政は製品導入までのプロセスが複雑なため、一度導入した製品を簡単に変更することはできません。なので、最初のツール選択がその後の業務効率化に大きく影響します。

DXの司令塔として、デジ室がそれらを選んで調達してくれることは、組織として大きな強みだと思います。少し話が逸れますが、デジ室には「デジラボ」をいうヘルプデスクや伴走支援を担う部門があり、各部署からの問い合わせに対して聞き取りをおこなったうえで、内容や部署の状況に応じて、業務委託・伴走支援・内製など現場に合わせた提案を行ってくれています。

プロジェクトチームでの保健師さんの提案をもとに作成した「電子申請」と「お知らせページ」が、驚くほどの効果を上げたと井上さんは語ります。

まず、FormBridgeによる電子申請ですが、想像より多くの方が電子申請を活用してくれました。

更に、陽性者本人が入力する情報なので、電話越しの聞き取りよりも正確ですし聞き取りの時間も不要です。その結果、電子申請と電話による受付を並行しても、全体の作業時間は削減されたのです。

kViewerによるお知らせページは、陽性者の方のスマートフォンにショートメッセージでURLを送ることによって対応しました。これによって、説明にかかる時間を1人当たり6分間短縮、陽性者の方も、いつでも見たいときに情報を閲覧できるようになりました。

市のホームページに掲載する方法や資料を郵送する方法も考えられますが、陽性者の方だけにお伝えしたい専用の電話番号等があること、郵送は時間がかかってしまうから、URLの一部を任意の文字列にして必要な方にだけお伝えすることで、情報を閲覧できる方をある程度制限することができるkViewerは、最善の選択肢でした。

kViewerの活用については、自分では思いもつかなかったことなので、プロジェクトチームによる「困りごとのキャッチアップ」が大きな改善につながったと思っています。

1人あたり6分でも、1日1,000人だと100時間。本当に驚くほどの改善です。

業務改善の奥の深さを知った一件でした。一人の目線や考えには限界がありますが、プロジェクトチームを通じて、実際に業務に従事する人を含む様々な人が意見を交わしあうことによって、組織としては大きな成果を、自分にとっては業務改善に対する気づきを得られたと思っています。

また、モバイル端末、kintoneやトヨクモ製品のライセンス等の環境整備、プロジェクトチームの結成は、トップダウンによる組織の全体方針や意思決定があってのものです。トップダウンによる意思決定とボトムアップの業務改善を通じた意識改革、DXには、これらが不可欠なんだろうと思います。

トヨクモ製品だからこそできた運用

今回の事例は、「kintoneの内製で柔軟に作り替えられる特徴が活きた一例では?」と井上さんは分析しています。

業務に合わせて作られた既成の専用システムも魅力的ですが、コロナ禍のように、変化が速く、意見を出し合いながらブラッシュアップが必要な状況では、自由度が高いkintoneやトヨクモ製品がベストだったとのことでした。

これまでは、システムを導入する場合は、仕様を定め、その仕様を満たす既成のシステムを探すか、開発業者と契約して詳細な仕様を決めてスクラッチビルドする方法が一般的でした。

当然、実際にシステムを利用するまでには時間がかかります。ですが、新型コロナを取り巻く状況は、刻一刻と変化していきました。管理すべき情報が追加されることも度々で、この様な状況では、これまでのシステムでは柔軟に対応することが困難な状況でした。

未知の状況や、走りながらシステムの作り替えを求められる職場で、kintoneとトヨクモさんの製品を使って内製する方法は、非常に柔軟性が高く、役立つことを実感しましたよ。

新型コロナをきっかけに、ローコードツールに初めて触れた井上さん。情報の集約・共有がスピーディーに求められる行政にとって、kintoneとトヨクモ製品により構築される情報管理の仕組みは、大きな支えになる存在でした。

「常に勉強し続けたい」現場を離れて芽生えた意識

業務が大幅に改善され、新型コロナが5類感染症に移行する直前の2023年4月、井上さんは、現在の職場へと異動(派遣)となり、業務でkintoneやトヨクモ製品に触れる機会は無くなりました。

しかし業務改善は、どの部署にも必要なものであり、いずれ、また別の職場でkintoneやトヨクモ製品を使う機会があるだろうと確信しているそうです。kintoneやトヨクモ製品との関わりは、今後も持ち続けたいという思いから、現在はkintoneの「チーム応援ライセンス」を家族で契約して、家族という「チーム」での活用を業務での改善に応用できないか、自身のスキルアップを兼ねて試行錯誤しているそうです。

トヨクモ製品を扱う部署から離れた井上さんですが、製品の機能面以外で感じるメリットに気づいたと話してくれました。

トヨクモさんの魅力の一つは、ユーザーコミュニティが充実していることです。さまざまな事例と出会えて、違う目線から意見交換できる場があるので、より効果的にツールを活用できる広い目線を持てるようになると思います。

実際、今は業務でkintoneやトヨクモさんの製品を使っていない私も、コミュニティのおかげで知識をアップデートし続けることができています。ツールを使い始めたばかりで操作に不安を感じている初心者の方はもちろん、定型化している運用スタイルから抜け出し新たな活用方法を知りたい方やイレギュラーな事案に悩んでいるようなユーザーさんにも、ぜひ、コミュニティに参加してみて欲しいと思います。

最後に、これからkintoneやトヨクモ製品を導入される方に向けたメッセージを伺いました。

これからツールを導入される皆さん、特に行政機関の方に持っていただきたいのは、「ローコードツールをどのように活用するか?」という視点です。

これまでのシステムは、「人による作業やチェックを自動化することで、ミスを減らし業務を効率化する」という目線が強かったと思います。しかし、ローコードツールによるDXでは、ツールに業務を丸投げするのではなく、ツールの得意な部分は任せ、ツールにない機能やレアケース、最終的なチェック作業などは人が行うといった「機械と人の役割の再分担」が重要と感じています。

システム化と聞くと、今までは、完璧さや便利さを求めすぎ、膨大なコストや実現可能性の低下を招きがちであったため、ローコードツールの活用には、パラダイムシフトが不可欠だと思います。また、申請などの業務は、全てをシステムに移行させなくても、ある程度の割合がシステムに移行すれば、既存の手順を残していても、全体で改善効果が出るケースが多々あります。

ローコードツールは、スモールスタートが可能ですので、現場の意見を交えつつ、効果が出そうであれば、対象者を限定して試してみるのも一つの方法だと思います。そして、改善により捻出された余力をさらなる改善に活用できれば、職員の成功体験につながるとともに、その経験を活用した業務改善の好循環が期待できます。もちろん、ある程度の予算は必要となりますが、スピード感を持って成果を出したいと悩んでいる方は、ぜひ一度、トヨクモさんの製品とkintoneを体験していただくと良いと思います。

kintone×トヨクモ連携ツールで業務改善に成功した活用事例は、トヨクモkintoneフェスで一挙公開します。

 トヨクモkintoneフェス参加で得られること

  • トヨクモユーザーが語るサービス活用のコツ
  • もっと便利なkintone活用法
  • トヨクモ製品の新機能紹介
  • 業種/職種別の活用例集
  • 初心者マニュアル/設定テンプレート
  • 他社比較
  • 初心者向けのセッション
  • トヨクモユーザーとの交流の機会

トヨクモkintoneフェスでは、トヨクモ製品の具体的な活用事例をバックオフィス、現場マネージャーなどといった業種・職種別に幅広く紹介。加えて、kintoneやトヨクモ製品のユーザーとの交流を通して、業務で直面している悩みやその解決策を共有することもできます。トヨクモ製品の活用法やコミュニティへの参加に興味のある方はぜひご参加ください。

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